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会議の合間に

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「あーあ、何にも分かってないんだなぁ、アーサーは。この服のセンスが分かんないようじゃ、今の世の中やっていけないぞ?」
「何だとこのワイン野郎! センスがどうとかこうとか話し合う場じゃねぇぞここは!」
「あーあーあー。聞こえない聞こえない。センスのない紅茶野郎の声なんか聞こえないー」
「お前今日こそきっちり白黒つけてやろうじゃねぇか……!」
「おっ、アーサー君はまたお兄さんのところへ負けに来てくれるのかな? 来るんなら、華麗にやっつけてあげるよ?」
「HAHAHA! いやー、君たちはいっつも忙しいなぁ。……お、ハンバーガーがなくなっちゃったぞ? よーし、じゃあ俺はちょっとマックにでも行ってハンバーガーを補充してくるぞ! さぁハンバーガー屋はどこかなっと……」

 いつも通りアーサー君とフランシス君がケンカを始め、アルフレッド君が食べ物を求めて外に消えたあと、僕はいつも通りに王耀の腕を引きずって外に連れ出した。
「大体、最初は抵抗して部屋に残ろうとするけど、すぐ諦めるんだよね、耀って。最初っから抵抗しなきゃいいのに」
 ちょっとからかったら、王耀はふくれっ面のまま黙り込んでしまった。通りをぶらぶら歩いていくうちに機嫌を直したのか、やっと会話が成り立ってきた。
「全く、あいつらは一向に成長しねぇある。会議やるたびに喧嘩ばっかりしてるあるよ」
「そう? 僕はいいけどね。だって、何回も会議開けば、そのたびに耀に会えるでしょ? 楽しみで楽しみで仕方ないんだぁ、この会議。耀が家に来るなって言うから、僕、必死に我慢してるんだよ?」
 今度こっそり遊びに行っちゃおうかな、と、僕は笑った。
「絶っ対に来んなある! 我の家、湾とか、ヨンスとかの家に近いあるよ!? 香にはバレたからいいとして――いや良くないあるっ」
「ふふ。僕、耀の体裁だけは必死に取り繕おうとするところ、結構好きだよ? 見ててかわいいし」
「か、かわいいとか言うなあるーっ!」
「そうやって真っ赤になってるとこもすっごいかわいい」
 ふふふと笑うと、王耀は僕の腕をバンバンと叩いてきた。
「うるせーある! イ、イヴァンなんか……っ、」
 嫌い、って言おうとしたんだろうけど、言えなくなってしまったみたい。
「え? 僕のことなんか?」
 訊き返してからちょっと意地悪すぎたかな、と不安に思った。後の祭り、ってやつなんだろうけどね。
「…………き、嫌い、じゃないある……」
 幸い、そこまで気にされていなかったみたいで、僕は胸をなでおろした。
「じゃあ、好きってことだよね?」
 耳元でそっと囁くと、王耀はまた赤くなってから、小さく頷いてくれた。
「僕も大好きだよ。ね、今度遊びに行ってもいい?」
「だ、駄目なものは駄目ある!」
 その主張を崩すつもりはないらしい。
「じゃあ、僕の家においでよ。歓迎するよ?」
「お、お前の家は人多すぎるあるよ! 何があっても行かないある!」
 会議以外で会えるとしたら、それは合同の任務か、じゃなきゃ偶然に会えた時くらいみたい。僕はもっと会いたいんだけどな。
 でも、一番大切なのは、王耀の意思。その次が僕の意思。それ以外はどうでもいいんだ。
 この戦争が終わって、王耀と会える機会が減っちゃうなら、また戦争を起こしてもいい。新しい戦争を起こして戦い続けてたっていい。それが、他のどんな人や国に負担を強いる行為だとしても、僕は王耀と一緒にいられる時間だけを優先したいから。もちろん、王耀が嫌ならやらないけど。
「そろそろ会議に戻ろっか。さすがに三人にもバレそうだしね」
 すごく名残惜しいけど、仕方ない。
「……会議では、耀って呼ぶなある」
「分かってるよ、王君。会議の帰り、途中まで一緒に帰っていいでしょ?」
「――勝手にするよろし」
 勝手にさせてもらうよ。心の中で返事をする。
 さすがにこのままずっと隠し続けるなんて無理だろうし、僕からバラしちゃってもいいんじゃないかな、なんてイタズラ心はいつもある。だけど、やっぱり一番優先したいのは王耀の気持ちだから、絶対に周りにバレないよう、僕は気を使い続けるんだろう。
「じゃあ、先に行ってて。僕は五分くらいしてから会議に戻るから」
「分かったある。いっつも悪いあるね」
「これくらい気にしなくても平気だよ」
 いつか、僕の元でこの世界を一つにしたら、王耀と毎日仲良く過ごせるのかな。
 そのためにだったら、僕はどんなことだってやって見せるよ、王耀。
作品名:会議の合間に 作家名:風歌