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sweet

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甘い物はあまり好まない。嫌いではないけど、進んで食べたい物ではない
こんな事を言えば彼は「もったいない!」と怒るのだろうな



「タクト」
「ん?何、スガタ」
首を傾げ、不思議そうにこちらを見つめてくる彼は、銜えていたクッキーをぱきり割る
自分の作った物が上手くいったのだろう、満足そうに目を細め唇を舐める姿に思わず喉が鳴った
その内、一向に言葉を発しないスガタにタクトは焦れ、「スガタ?」もう一度男の名前を呼ぶ

「…ッ…と、すまない」
「大丈夫?疲れてるんじゃ…」
ふわり風が動いたと思ったら、花の香りが漂う。低い、でも優しい温度が額に触れた
熱はないな。耳を擽る声。心配そうにタクトは呟き、スガタの目を覗く
その真摯な瞳に思わず息を呑む。…なんか居心地が悪いな

「あ、ああ、大丈夫だ。クッキー、上手くいったようだな。それに視線を奪われた」
「ふふ、何言ってるの。甘い物あまり食べないんじゃなかったっけ?」
くすくすと可笑しそうに笑う彼の手に自分の手を重ね、苦笑。するり指を絡め、
「僕だって偶には食べるさ」

───そう、特に好物は、ね

そのまま、一気に引く
驚きに目を見開き倒れこんでくる彼に微笑を向け、ソファーに押し倒すと広がる赤い髪にうっそり笑む
ああ、…綺麗だ。夕日色の瞳と同じ色は暖かく、惹かれる。何時までも触っていたい

硬直するタクトが逃げないよう、体重をかけ「タクトって甘そうだよね」、笑みを深めた
「へ…?」
「どこもかしこも…」
顔を近づけ、低く囁くと震える体。ちゅ、と耳に口付け…舐める。その感触に跳ねる体
(やはり──甘い)
耳から首へ、鎖骨、顎の下へと移動させ、もう片方の手はするり背中を這う
止まらない衝動に、でも抑える事もしない熱は高まり、彼を求める

「…ッ…スガ、タ…!」
ストップ…!意識を取り戻した彼は制止をかけるよう、空いた腕を伸ばしスガタの胸を押す
むッ、と何故止める、と顔を上げ、視界に映ったタクトの表情に魅入る

甘く色付く目元。そのまろやかな頬は薔薇色に染まり、潤む目で男を睨む
熱を逃がすよう大きく息を吐く姿はまるで、誘っているかのよう。それは無意識だろうが…
瞬く瞳からころり、涙が流れ、吸い寄せられる

零れ落ちた雫をぺろっと舐め、「…甘い」小さく呟く
「ス、ススガタ…!?」
「ん。…ねえ、タクト」
「な、何?」
「甘い物が、食べたい」
再び固まる彼に、意味を汲み取ったのかと珍しさに瞬いた。それを感じ取ったのだろう
直ぐに眉を寄せ、「…僕だって偶には読み取りますー」不機嫌そうに口を尖らす彼に「偶になんだ?」少しの意地悪を

ぐッと息を詰まらせる姿にくすり、微笑。…なら、さ、食べさせて。背中に当てていた手を戻し、頬に触れるとますます色付く彼
無言のまま見つめていると僅かに頷くタクトに気付かれぬよう、息を吐いた。…本当はいつもな事は黙っておこう

きょとんと不思議そうに首を傾げる彼に何でもない、とにっこり笑む
それ以上追及せず溜め息を吐き、観念して伏せられる瞳に、静かに顔を近づけると瞼の上に熱を落とす
「…スガタって意地悪だよね…」
「嫌?」
「…嫌じゃないのが嫌」
「ふふ、何だそれ」
うるさい、ばか。引き寄せられ、タクトから詰められる距離に小さく微笑んだ


────ああ、やはり身も心も甘い



それは彼だけの極上のお菓子


作品名:sweet 作家名:夜。