傷つけない ~風丸編~
すると、「あ・・・っ」と何となく気まずそうに
一歩さがられたそれでも俺は気にせずに続ける
「今から部活だよな?」「うん・・・あぁ!!」
一つ間の空いた微妙な返事をする円堂
でも、気にしない いつものことだから・・・。
その時、「円堂!」と豪炎寺の声が降ってきたその瞬間円堂はバッと振り返って
「あーわりぃわりぃ!!」と笑顔で駆け寄っていった、かと思うと俺のほうを振り返って
「また、後でな!!」といつもの笑顔で言い放った
そして、豪炎寺と二人で肩を並べて歩き出した
「・・・・。」俺はボーっとたたずんでいたが
すぐに「ハッ・・・」と鼻で笑って頭を抱えた
最近、円堂がよそよそしくなったのは知ってる
でも、どんなに考えても理由が分からない・・・
俺が何かした?・・・いや心当たりがない、それとも 付き合うのが嫌になった?
俺に飽きた?もしかして、俺のこと・・・嫌いになった・・・?
考えれば考えるほど 苦しくなってくる
俺の心は重く暗い闇にい沈んで行く・・・・。
「バカだ・・・。」自分が自分で嫌になる「ッ――――――――――――。」
自然と溢れてきた涙が頬を伝う“円堂!!”
声にならない声で大好きな人の名を叫ぶ
頬を伝う涙のように次から次へといろんな思いが溢れてくる
“俺が一度裏切ったからか?” “俺が弱いから?” “頼りないから?”
俺はその場で力なく座り込んだ
そして、声を殺して泣いた―――――――
「風丸君・・・?」突然、頭の上から心配そうな声が降ってきた
俺は慌てて顔を上げるとそこにはヒロトの顔があった
目が合うと「大丈夫・・・?」と聞きながら涙を拭ってくれた
俺は気づくとヒロトに抱きついていた ヒロトはきっと驚いたと思う
でも俺が「ヒロ…ト・・・」と小さく名前を呼ぶと抱きしめ返してくれた
そして、「どうしたの・・・?」とやさしく聞いてくれた
俺は、ヒロトに体を預けたままポツリ・・・ポツリと円堂のことを話し始めた
すべてを話し終えた後
「やっぱり、俺ってバカだよな・・・?」
と苦笑交じりで聞くと いきなり力強く抱きしめられた
「ヒロト・・・?」「風丸君はバカじゃない!!」
いつもの温厚なヒロトからは考えられないくらいの語勢だった
「風丸君はバカじゃないよ・・・でもバカだ・・・」
俺はヒロトの言ってることがよくわからなかった
どういう意味か尋ねようとしてもそれはヒロトによってかき消された
「やっぱりバカだよ・・風丸君は・・・
どうしてこんなに苦しんでまで円堂くんと一緒にいるの・・・?
どうして 円堂くんなの・・・? 俺じゃ駄目なの・・・?」
俺はヒロとの言葉にドキッとした“俺じゃ駄目なの?”それってつまり・・・
頭の中で考えているとヒロトは、また話しだした
「それに俺なら・・・こんなふうに風丸君を泣かせたりしない・・・」
ヒロトが俺の顔を覗き込む
また、目と目が合った その時の目は本当に苦しそうで切なそうで
そして、なにより愛しそうに俺を見据えていた
「ねぇ・・・風丸君・・・俺にしときなよ・・・」
俺は完全にヒロトに酔っていた
ヒロトの唇がゆっくり俺の唇に近づいてくる
俺はただそれを受け入れるようにゆっくり目を閉じた・・・・。
作品名:傷つけない ~風丸編~ 作家名:風神(ふうしん)