魂を繋ぐもの
お前が死んでも 俺は泣かない
世界中の人間が泣いても 俺だけは泣かない
毒を散々打ち込まれたはずなのに、限はそれでも地に頭を伏せたまま翡葉に頼み込んできた。
「お願いします……頭領にだけは……!」
烏森の戦いで変化しようとした、それを報告すると告げたら、限は翡葉にすがるような声で懇願してきた。
俺はそれを一蹴した。
盲目的で。
不器用で、殉教的で。
烏森の二人の正当継承者に情を抱いて。自分が辛くなるだけだとわかってないようだったから、つきつけた。
「こいつはなぁ……実の姉を、半殺しにしてんだぜ」
笑いながら、いつも一番冷たい言葉を選んで投げつけてた。
それぐらい言わないと効き目がないと知っていた。
あんなに、心ない言葉に傷つけられて。それでも戦い続けた――脆くて、儚くて、真っ直ぐな魂。
何のためにお前の心を傷つけ続けていたのか、お前は結局気付かなかったのか。
黒い棺はもう何も語らない。
「黙祷」
正守の声に合わせて俺達は骸に黙祷する。
これがただの通過儀礼ならどれほどいいか。
「限…限……限!!」
アトラの声が遠くに聞こえた。
世界中でお前の死を嘆いていても
俺だけは声を上げて叫んでやる お前の死は無駄死にだって
お前は
もっと生きているはずだったのにって
<終>