アイスクリーム ハプニング 【ちびバンガゼ】
「ふーすけのアホーっ!」
ヒロトが帰ってくると晴矢と風介がまたケンカをしているようだ。部屋の外では二人のケンカを心配そうにみつめている人たちがいた。
「なんでこうなったんだい?」
ヒロトはケンカのいきさつを聞こうと茂人に声をかける。
「あっ・・・ヒロト・・・実は・・・」
茂人の話によると、どうやら冷蔵庫にはアイスが1本しか入っていなくてそれを取り合いになってケンカがはじまったらしい。ケンカをしている間ずっとアイスは冷凍庫の外に出されており全て溶けてしまって食べられなくなってしまいもっとケンカが激しくなったようだ。
「ヒロト、どうにかしてよ・・・」
まわりからSOSの眼差しが集められヒロトはしかたがなく二人がケンカをくりひろげている部屋へと入っていった。
部屋の中は二人が暴れたのかいろんなものがあちらこちらに散らばっていた。ヒロトは問題の二人に近づいていった。晴矢はツンッと腕組をして風介に背中を向けていて、風介は涙目になりながらひたすら晴矢に向かってバカバカと連呼していた。ヒロトは大きなため息をわざとつくが二人は気がつかない。
「二人ともアイスくらいでケンカしないの!」
「はるやがアイスをとったの!」
「ふーすけはアイスの食べすぎだよ!」
二人はお互い謝る気がないと確信したヒロトはしかたなくポケットから財布をとりだすと500円玉を出し二人に見せる。
「アイス買ってやるからケンカはやめな」
二人はお金をはやくよこせといわんばかりに目を輝かせてこちらを見つめてくる。
「500円玉一枚あげるから二人でいっておいで」
二人で行ってこいという言葉に二人は少し顔を曇らせた。ヒロトが考えた二人の仲直り作戦は失敗かと思った。しかし、晴矢はヒロトから500円玉をとると風介に近づいていった。
「ふーすけ、ごめんね。一緒にアイス買いにいこ?」
晴矢はそう言うとうつむいている風介に手を差し出す。目の前に手を差し出された風介は不思議そうに晴矢の方を見る。晴矢は少し照れくさそうにそっぽをむく。
「うん♪」
そんな晴矢を見て風介は嬉しそうに答えると晴矢の手をとる。
アイスを買いに行ったふたりはずっと手をつないだまま帰ってきて、ケンカをしていたのが嘘かのように並んでアイスをほおばっていた。ヒロトはそんなふたりをほほえましそうに見ていた。
ツンツン
その時、誰かがヒロトをつついた。
「ん?」
後をふりかえると二人のケンカを見ていた茂人たちがヒロトを見上げていた。
「どうしたの?」
「はるやとふーすけだけアイスずるい」
こうしてヒロトは全員にアイスをおごるはめになってしまったのだ。
作品名:アイスクリーム ハプニング 【ちびバンガゼ】 作家名:風(ふぅ)