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風(ふぅ)
風(ふぅ)
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風の後【宮風】

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「風丸―ナイスシュート!」

グラウンドからサッカー部のキャプテンの声が聞こえる。宮坂はさっきからサッカー部の方が気になり陸上の方に気合いが入らない。

「宮坂、今日は調子が悪いのか?前よりもタイムが2秒も落ちてるぞ」

先輩部員に心配されてしまった。

「すいません・・・なんでもないです!」

宮坂はそういつものように元気よく言うと再びスタートラインまで走っていった。

「よーい、スタート!!!」

ホイッスルがなると宮坂は風のように走り出した。毎回、隣のレーンが気になる。以前までは風丸がいたのに、今では自分より後を走る部員たちしかいない。風丸がいなくなってから宮坂は走りに力が入らなくなっていた。

(風丸さん、早く帰ってこないかな・・・)

宮坂は再びグラウンドに目を向けると楽しそうにサッカーをしている風丸の姿が見え少し嫉妬のような醜い感情が自分の心の中で小さな芽をつくったのがわかった。

 それから数日。陸上部でグラウンドの周りをランニングしていると風丸を見つける。

「風丸さん!!!!」

宮坂に気がついた風丸は笑顔で手を振ってくれた。宮坂に気がつくと風丸は円堂に断りをいれて宮坂を優先してくれた。なんとなく優越感を感じた。

「風丸さん!そろそろ帰ってきてくれますよね?」

久しぶりに話すことに心を躍らせながら聞いた。

「あー・・・」

風丸は答えにくそうな顔をした。宮坂は風丸はどこか遠くに行ってしまうような気がした。

「風丸さん!僕と勝負してください!僕が勝ったら陸上に戻ってください!」

風丸は宮坂の真剣さがわかったのか小さくため息をつくと宮坂についてコースまで歩いていく。

パァン

ピストルの乾いた音が鳴り響く。風丸と宮坂は同時に走りだす。しかし、隣同士で走っていたのはほんの少しの時間。宮坂はどんどん間を離されていく。

(早いっ・・・)

宮坂がゴールしたときには風丸は宮坂の走りを見ていた。

「宮坂、早くなったな」

風丸は勝ったのに、宮坂を褒めてくれた。大好きな風丸に褒められた嬉しさとサッカー部に行ってしばらく陸上をやっていなかった風丸に負けた悔しさが交錯して複雑な気持ちだった。

「ごめんな宮坂、まだ陸上には戻ってこれない」

風丸は本当にすまなそうに言う。

「僕が負けたんだし、もうなにも言いませんよ」

宮坂は風丸がまだしばらく陸上に戻ってこないというショックを一生懸命隠しながら笑顔で言う。

「また、宮坂が早くなったらタイム勝負してやるから」

風丸はそう言うと陸上部のみんなに手を振りサッカー部の練習に戻ろうと後ろを向いた。

「風丸さん!一つお願いしていいですか?」
「なんだ?」
「いつか俺が風丸さんに走りで勝ったら陸上部に戻ってきてくれますか?」

風丸は勝ったらなといいサッカー部へ帰ってしまった。

 その日から宮坂は走りに元気が戻りいつもの元気な宮坂に戻った。そして、日々走りこみいつかサッカー部から風丸をとり戻す日を夢見て走り続けた。
作品名:風の後【宮風】 作家名:風(ふぅ)