【DRRR】乱雑ティータイム【静帝ヴァロ】
そう帝人に形容されたとき、静雄とヴァローナは思わずお互い顔を見合わせて目を丸めた。きょとんとしている二人の顔を見つめながら、帝人は目を細めてこてりと首を傾げた。
「借金取りのお仕事って、何となく大人の雰囲気がしませんか?」
「大人っていうか、社会の中でも駄目な部類だろ」
静雄は怠惰に煙草を唇で挟みながらも、火をつけることはないままぼんやりとした調子で呟く。ヴァローナは美しい顔立ちを歪め、遺憾です、とはきはきとした口調で声を上げた。
「駄目な部類とは著しく認識の相違、理解です。最も近しい表現の仕方、情けない部類 発案です」
「情けない…そりゃそうだ」
情けねぇな。静雄がこくこくと頷きながら答えると、帝人はおろおろと二人を見上げて、そんな、と声を震わせた。静雄は帝人の声が存外頼りなく聞こえたことに目を丸め、かりかりと頭をかきながら首を傾げる。
「いや、なんつーか 仕事の内容がだな…」
「限りなく情けない仕事、把握です」
ヴァローナは肩をすくめ、じゅるじゅると甘いタピオカミルクティーを飲む。もむもむと吸い上げたタピオカを食べているヴァロ―ナに何とも言えない表情を見せながら、イチゴシェーキを飲む静雄は、彼に奢ってもらった無糖のコーヒーを両手でいじって眉を潜める帝人を見つめた。
「人様に胸張って言えるような仕事じゃないってこった」
「…けど、素敵な仕事ですよ?」
借りた物を返すって、当たり前のことをしない人が相手なんでしょう。帝人の言葉にはちらりと正義感や道徳が見え隠れしており、静雄はふわりと笑みを浮かべて帝人の頭を撫でる。もにもにとタピオカを食べ、呑みこんだヴァローナは、納得です、と重々しく呟いた。
「発想の転換、驚嘆です。タピオカを贈呈します」
「待て、どうしてそうなるんだ」
ヴァローナは太めのストローを帝人へ向け、あっさりとした調子で帝人へタピオカを勧める。ぎこちない笑顔で首を傾げた帝人に変わって声を上げた静雄は、きゅるきゅると音を立て、イチゴが磨り潰された桃色のシェーキを喉へ押し込んだ。
「このタピオカは絶品です。広範囲に推奨、行動です」
「あの、そんな 僕はいいですから…」
ひらひらと手を振りながら目を細め、帝人は困ったように微笑みをうかべた。ヴァローナは 残念です とさらりとした調子で声を上げ、するすると再びミルクティーを口に運ぶ。静雄はしかめていた眉を緩々と緩め、帝人へ視線だけで謝罪をした。帝人は静雄の視線に気づき、ふわりと笑みを浮かべて答える。ちゅるちゅると音を立てながらタピオカを飲み込むヴァローナは整えられた眉を潜め、唇をすぼめて二人を見つめた。
「不平等です。先輩と竜ヶ峰帝人の視線の交換、遺憾です」
ヴァロ―ナの悔しそうな声へ、帝人はこくりと飲みかけていたコーヒーを気管に注ぎこみかけそうになる。けほけほと咳こむ帝人と、帝人の背中をさすろうとしながらも自らの力のために逡巡している様子を見つめながら、ヴァローナはタピオカの最後のひとつをもちもちと噛み切り、はふりと息をついた。
「先輩の優勢、認めたくない道理、納得です。タピオカは絶品、今度は竜ヶ峰帝人と二人で咀嚼を希望します」
「…っ!何言ってんだヴァローナ!」
-------------------
「先輩、動揺の現れ発見です。竜ヶ峰帝人の背中から奇怪な音がします」
「! 竜ヶ峰、すまん!」
作品名:【DRRR】乱雑ティータイム【静帝ヴァロ】 作家名:宮崎千尋