傷つけない ~基山編~
遠くのほうで風丸君と円堂君の話す声が聞こえてくる
俺は耳を澄ます。
「・・・。」
突然静かになった・・・
「円堂!!」
___________?ぅん?今度は豪炎寺君の声?
そこからはうまく聞き取れなかった
でも、バタバタと二つの足音は聞き取れた、
たぶん、円堂君たちが去っていく音だろう
(風丸君も行っちゃったよね・・・)
と思いつつも俺の足はさっきまで声のしていた方向に勝手に向かっていた
タッタッタッタ_______________
しばらく歩いて俺は足を止め、ふと顔を上げてあたりを見渡した
その時だった
「うッ__________ふぇッ_____________」
______________?泣き声・・・?
俺は恐る恐る声のする方へ歩いてゆく
声はだんだん近くなる、そして行き止まりの角をまがったところで俺はハッとした
そこには、肩を震わせ、小さくうずくまる風丸君がいた・・・
「風丸・・・くん?」勇気を出してそっと声をかけると
風丸君はドキっとしたように顔を上げた。
その顔はあふれた涙でぐちゃぐちゃになっていた
俺は風丸君と同じ目線になるまで腰を落として彼の涙を優しく拭ってあげた
すると風丸君はそっと俺の腰に手まわしてきて
そして「ヒロ・・・ト」と小さく俺の名前を呼んだ
その声は、寂しそうで切なそうで
いつもの風丸君からは考えられないくらい弱々しかった
「どうしたの?」優しく聞くと
風丸君は俺に体を預けて、少しずつ円堂君とのことを話し始めた。
すべてを話し終えると彼は
「やっぱ俺ってバカだよな・・・」と呟いた
それを聞いた瞬間「そんなことない!!」と俺は自分でも驚くような語勢で叫んでいた
「風丸君はバカじゃないよ・・・でも・・・ バカだよ・・・」
風丸君は意味がわからないという顔をしていた、それもそうだ・・・
俺は 自分でも自分の言ってる意味がわからなかったのだから・・・
それでも、俺の口は勝手に動き出す・・・。
「やっぱり・・・バカだよ・・・風丸君は・・・
どうしてこんなに涙を流してまで円堂君と一緒にいるの?
俺じゃ円堂君の代わりにならないの? 俺じゃダメなの・・?」
風丸君はドキッとしたような顔でこっちを見つめている、
俺は一瞬 しまった と思ったがそれは頭の中での話で
心はもうすでに歯止めが利かなくなっていた・・・。
そうして、俺は思いのすべてを吐き出した
「俺ならこんなに君を泣かしたりしない・・・苦しめたりしない・・・
ねぇ・・・?風丸君・・・俺じゃダメかな・・?」
俺はゆっくり風丸君に顔を近づける・・・
すると意外にも風丸君はなんの抵抗もせずに
ただ、色っぽい目をして俺の名前を一度呼び
ゆっくり、目を伏せた。
俺はゆっくり風丸君にキスをした
(ごめんね・・・円堂君・・・風丸君は譲れない・・・)
俺は唇を重ねながら
物陰でただ茫然と俺たちを見つめる
円堂君に目をやった・・・。
作品名:傷つけない ~基山編~ 作家名:風神(ふうしん)