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想いの行き先は誰にもわからない。

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「帝人くんなんて嫌いだよ」
嗤って吐き捨てる彼に、僕はただ「そうですか」と応える。何時ものように、変わらない応えを。

(だって、ねえ)(他にどう応えればいいの)

当たり障りの無い人生――まだ15年程しか生きてないけど――で、特に苛めも経験せず、好きか嫌いだと普通と言われる、そんな人間関係しか無かった自分にとって、面と向かって「嫌い」と言われるのは正直傷付くし、素直に哀しいと感じる。例えそれが言葉遊びが大好きな人間から与えられたものだとしても。

(彼は何を思って僕に嫌いと言うのだろう)

愛を叫び、愛の名の免罪符でもって人を弄ぶ。どうしてこんなことを、という僕の問いには、愛してるから!の応え。何て単純明快で複雑怪奇。愛される人間もたまったもんじゃないなと他人事のように(実際そうだけど)思いながら、では嫌いと面と向かって吐き捨てられる自分はどうなんだろうかと考える。
博愛主義を唄う彼が底知れぬ憎悪を向ける相手が居るのは周知の事実。けれどそれとはまた別物だろうと思う。そうでなければ今頃自分は彼のせいで、とっくに死んでいるだろうし、嫌いとのたまう口で、普通に声を掛けて、普通に話して、時折人の家に不法侵入したり夜中突然押し掛けたりはしないだろう。僕がわかるのは、彼が人に愛を叫ぶ代わりに、僕には嫌いと吐き捨てることだけ。
(本当にどうしたいんだろう)
万物に愛される存在はこの世には居ない。神様だって信仰する人もいればそれを憎む人だっている。だから僕を嫌う人間だっているだろうと思う。でも、前述した通り僕は面と向かって嫌いと言われる経験もそれを押しつけられることも無かったものだから、少しだけ、――否、もしかしたら結構堪えている。ずきずき、心が痛むのだ。
(なにより、僕が臨也さんを嫌いじゃないから)
だから僕は傷付いているのだろう。挨拶のように繰り返される嫌いという言葉に。飽きることなく、慣れることなく。
日常では無い日常を躍るように歩く彼という存在に僕は憧れた。人間性には多大な問題があっても、関わらなければ良いとは理解していても、僕が愛してやまない世界に身を浸らせる彼が羨ましくてしょうがなかった。
だからといって、彼になりたいわけではない。ただ彼の傍に在れたらどんな日常がおくれるのだろうと甘美な空想に浸るのだ。
これも愛?と聞かれれば、まあ愛でしょうねと頷くし、これが愛?と問われればさあどうでしょうと首を捻る。好きか嫌いかなら、好き。でももっと詳しく言うのであれば、よくわからない存在。それが彼。僕を嫌うあの人への想い。嘘ではない気持ち。
もし、僕の中で好きという気持ちの比重が一番重くなったら、九官鳥のように嫌いと吐き捨て続ける彼に応えてみようか。
(僕は好きですよ、なんて)
言ったら彼はどう返すだろう。やっぱり嫌いだよと応えるかな、それとも―――。
けれど、心など自分でも推し量れない厄介なものだ。空想するなら自由。しかし現実は一つ。
だから、


「帝人くんなんて、嫌いだよ」
「そうですか」


今日も僕らは変わらないやり取りで、心を交わし合う。