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如月ヒメリ
如月ヒメリ
novelistID. 13058
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誰も知らない

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「伊月センパイ?」
誰も知らないと思う。
「ねぇ、」
誰にも知られてはいけないんだとも思う。
「何か言ってほしいっスよ」
この、自分より1つより年下の、背だけは自分より高いこの男。
「セーンパイっ?」
黄瀬涼太に、こんなことをされてるという、事実を。


ざぁざぁと、雨が地面を打つ音だけがやけに響く。
人の少ない路地。雨のせいか傘をさして歩く数少ない人は自分の足元しか気にしておらず、ゆえに路地の隅で向き合っている奇妙な二人組の高校生も視界に入らない。
じり、と思わず後ろに下がると、背中に冷たいコンクリートの壁が当たった。
腕に左右を阻まれ、逃げ道がなくなる。
相手を見上げると、目に映るのは整った顔。さすがはモデルだな、と思う。いやいや、今はそんなことどうでもよくて。なんでこの人気モデルさんに、自分は詰め寄られなきゃならないのだろうか。思い当たる節はないはずだが。
困惑した表情でいると、くしゃっと髪を撫でられた。
「何すんの、」
思わず振り払追おうと手を伸ばすと、その手をつかまれる。
「ね、伊月センパイ、オレセンパイのこと好きなんスよ」
そう言われてつかまれた腕に静かに唇を押し付けられた。
「っは?」
言われた言葉と黄瀬の行動が理解できなくて、口から間抜けな声が漏れる。
黄瀬はそんなこと気にもせず続けた。
「前に練習試合した時から、ずっとずっと」
ずっと好きで、ずっと見てたんス。
そんなストーカーじみたことを告白されても、回転の追いつけない頭では大したことは考えられない。
どういうこと。黄瀬が、オレのこと、すき?それはlike?それともlove?
疑問だけが頭をめぐる。
それを理解してか否か、黄瀬は静かに唇を重ねてきた。
いきなりの出来事に抵抗することもできず、受け入れてしまう。
「ね?」
理解したか、と目で問い返してくる黄瀬に、何もできない。
ただ、少しだけ体温が上がった気がして。
それを見て黄瀬はかわいい、とつぶやいてまた頭を撫でてきた。
するり、と服の中に侵入してきた手が、素肌に触れる。その冷たさに体をこわばらせると、くすりと笑われた。
手はそのままに、無理やり唇を重ねられる。
数秒たつと黄瀬の唇は輪郭をなぞり、下へと進んでゆく。
首筋から鎖骨へ。そこで黄瀬は動きを止め、ちぅ、とわざと音を立てて吸い付いた。ちり、と小さな痛みが走る。
「っぁ、」
「しー、声出しちゃダメっスよ」
ばれちゃうよ?と耳元で囁かれて、思わず唇を噛む。
そしてするりと黄瀬が離れて、あまりにも満足そうな顔をするから。なんか、泣きたくなった。
鎖骨にくっきりと残った、赤い紅い、痕。
「じゃあ、また今度っス。今度は家来て、ね?」
いつの間にか火照った体と、思考能力の低下した頭を放り出して黄瀬は去っていく。
もう、あんたはオレのだから。
離れていく黄瀬が、そうつぶやいたように聞こえた。

赤い痕が、それを誇示するように、小さく痛んだ。



作品名:誰も知らない 作家名:如月ヒメリ