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天闇夜 命
天闇夜 命
novelistID. 24557
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赤い花

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赤い花


 夜中に眼が覚めて、ヴィンセントはふと隣の部屋と自分の部屋を隔てる壁を見た。
 かつて、敵だった男と同居している感覚は、やはり不思議なものだと、ヴィンセントは思った。
 過去―――すくえなかったと罪の意識で彼を拾い、一緒に住んでいるのだが、いつの間にかその感情は同情ではなく、まったく別の感情になっているという事をヴィンセントは自覚していた。
(―――セフィロス)
 男の名前を心の中でつぶやいた。
 最初は―――敵として、憎しみの感情もあった。
 だが、今は―――ただただ、愛おしい。
 だが、この感情は―――おそらく、彼へ向けての感情ではないのだろう。
 かつて愛した女性、ルクレツィアの影を彼の中に見ているのだ。
 頭を一つ振ることでその考えを振りはらう。
 ―――だめだ、こんな感情を持っていては……
 いつか、彼を傷つけてしまうのではないかと、思っていた。
 やっとジェノバから開放されて、自分の意思で生きている彼をまた堕落させる気なのかと自分に問いかける。
 はあ、と一つため息。
 いつの間にか自分は隣の部屋―――セフィロスが眠っている部屋まで来ていた。
 ゆっくりと、彼の髪に触れる。
 さらりとした絹糸のようなそれは簡単にヴィンセントの指をすり抜けていった。
 今度は頬、そして唇にふれて……
「………!!」
 気が付いてはっとした。
 ヴィンセントは、セフィロスの上に馬乗りになり、今自身の唇とセフィロスのそれを重ね合わせようとしていたのだ。
 もう、何度目だろう。
 このセフィロスへの感情を自覚してからいつもそうだ。
 真夜中に起きては、彼の部屋へ行き、今のようなことをする。
 だめだ、と理性が静止するも、ヴィンセントの欲はかれの身体をむさぼりたいといっていた。
 常に理性と欲望の葛藤の中、ヴィンセントはやっとといった感じで、おのれを保っていた。
「うぅ……ん?」
 小さなうめき声が聞こえてきて、はっとヴィンセントはセフィロスを見た。
「セフィ……ロス??」
「ん、ん?……ヴィン?あした、また……?」
 その言葉に苦笑した。
 ヴィン―――昔、彼の護衛の任務を請け負ったことがある。
 その時彼は自分のことをヴィンと呼んでいた。
 幼いころのことで彼はよく覚えていないらしいが……―――おそらく今見ている夢は、そのおぼろげな記憶の欠片なのだろう。
「セフィロス……」
 優しく、髪を一撫でするとヴィンセントは部屋を出た

 翌朝
「ヴィンセント?……どうした?」
 早朝から、朝食の用意をしていたセフィロスが起きてきたヴィンセントに問う。
「どうした、とは?」
「最近目元にクマをつくって……眠れないのか?」
 じっとこちらを見つめる翡翠の瞳・
 この瞳を自分だけに向けさせたいという欲望が何処からか湧き出し、ヴィンセントはあわてて眼をそらした。
「あ、いや、問題ない。」
「そうか?」
 なおも心配そうにこちらを覗き込むセフィロスにもう一度問題が無いことを伝えると彼は渋々といった感じでキッチンの奥に消えた。
 今日の朝食はすくランブルエッグとベーコンとサラダだ。
 最初はほうちょうもロクに仕えなかったセフィロスだったが、もともとの見込みが早いからか、今では人並み以上には料理ができるようになっていた。
「セフィロス、最近はどうだ?」
「どう、とは?」
「生き返ってから、よく貧血で倒れたりしただろう?」
「ああ、大丈夫だ。一応、ある程度は剣もふるえる。」
「そうか。」
 やわらかい微笑を浮かべるセフィロスの頭をヴィンセントは軽く撫でた。
「無理はするな。私はお前が心配なんだ。」
 小さくつぶやいた言葉になぜかセフィロスは悲しそうに顔をゆがめた。
「心配?」
「……ああ、」
「それは、自分の罪が、とか……そういった意味での感情か?」
「セフィロス?」
「同情とか、そういった感情で俺に触れないでくれ。……俺は、俺はそういう目で見られるなら優しくなんかしないでくれ。」
 あまり感情を表に出さないセフィロスが自らの内に秘めた感情をこうやって口にだ図のは珍しいことで、ヴィンセントは戸惑っていた。
「……ルクレツィア博士、か。」
 セフィロスの口から唐突に漏れ出た名前。
「俺が彼女の息子だから、彼女に似ているから……ヴィンセントは俺に優しくするのか?」
 その言葉に数週間前、ツォンから聞いた言葉を思い出した。
『昔から英雄とたたえられた彼だが、彼の本質を知るもの、知ろうとするものはほとんどいなかった』
 なおもセフィロスは続けた
「誰も、俺の本質を見てくれる人はいない。」
 その言葉とツォンから聞かされた彼の過去が重なった。
「違う!私は……」
「もう、俺にかまうな!」
「私は、お前を愛している。」
 激情の中、口から出た言葉。
 その言葉を口にした瞬間、ヴィンセントの中のルクレツィアのイメージが霞がかったように薄まった。
(そうか)
 やっと自覚した。
(私は、他の誰でもない彼を、セフィロスを愛していたのだな。)
 全てが吹っ切れたヴィンセントは強い瞳でもう一度、セフィロスに愛しているとささやいた。
「う、嘘だ。」
「嘘じゃない。」
「でも、お前は……」
「昔の話だ。……セフィロス、私を信じろ。」
 紅の瞳に見つめられ、セフィロスはしばらく黙っていた。
 急な告白にどう答えるべきかわかっていないのだろう。
「セフィロス……、いやなら私を突き飛ばしてくれ。」
 顔を近づけ、ついばむようなキスをする。
 そして次には深いキスを……
 抵抗は無く、セフィロスはヴィンセントの背にすがり行くように腕を回していた
作品名:赤い花 作家名:天闇夜 命