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コンビニへ行こう! 前編

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自分が強いという気になっていること、そのものを否定しては、あまりに哀れだ。きっといつか現実に直面して我に帰る日が来るはず、その日までは幸せな夢を見せてあげなくては、と。
真剣な顔でじっと見詰めてくる帝人に、臨也はそんなことを思われているなんて予測さえできず、うわああい帝人君と見詰め合ってる俺!とか浮かれっぷりも最高潮でかあっと頬を染めている。帝人は握り締めた臨也のコートのすそをもう一度引いた。
「逃げましょう、折原さん」
とてもとても真面目な顔で。
「僕はお役に立てませんし、一人で立ち向かうなんて危ないです!」
その言葉を、心配してもらっているのだと受け取った臨也は、心が盛大に「きゅうううううん!」と音を立て、雑巾のようにねじれる気分になった。ただでさえ惚れているが、その上あんな雑魚相手に心配してくれるとか、どれだけ優しいんだろうこの子は。
まさに天使!
俺の天使!
「ね、折原さん」
さらに帝人は諭すように畳み掛ける。
「集団って言ってましたけど、複数人なんですよね?だったら益々、折原さん一人に戦ってもらうわけにはいきません。それに、僕怖いです。だから逃げましょう、ね?」
そこまで言われてしまったら臨也が折れないわけには行かない。何しろ惚れているのである、好きな子が心配してくれているこの状況で、さらに心配をかけるような行動に出てはいけない。
「わ、分かった、君がそういうなら……」
感動に打ち震えつつ答えた臨也の手を引いて、帝人は来た道を引き返す。とりあえず一度大通りに出て、人通りの多い道にルートを変更するのがベストだ。
あ、でもなあ。
帝人はまたしても考えた。
もしかしてあれかな、中二病にありがちな、「見えない敵と戦う俺、かっいい」的な妄想なのかな?
とても痛々しい人だと思われているなんて知らない臨也は、手を引かれたことで本日最大の喜びの中に居るのだけれども。まあそこは、互いの心を知らないことが互いの幸せであるからして。



手を繋いで夜の道……うわああああ夢なら覚めないで!このまま時よ止まれ!



うーん、もしかして、虚構の敵に守られてあげたほうが喜んだのかな?でも、一人バトルとか見てても楽しくないしなあ……。



……この温度差は、そう簡単には近づきはしないだろうけれど、そこはまあ、臨也の今後の頑張り次第ということで。
「ええと、この先が僕の家です」
流石に、あのボロアパートの前まで送ってもらうのは申し訳ないな、と帝人が足を止めたのは、家まであと数十メートルというところだった。外灯も多い通りなので、間違ってもこの道でカツアゲに捕まることはあるまい。そう思って臨也を見上げる。
「あ、そ、そうなんだ。へえ、この辺に住んでるんだ」
翌日からわざとこの辺をうろつこうと心に決める臨也に、
「はい。送ってくださってありがとうございました」
と律儀にお礼を返す帝人。
一瞬の沈黙が当たりに満ちた。
「それじゃ……」
「い、臨也!」
このへんで、と別れを告げようとした帝人の声をさえぎって、臨也はありったけの勇気を振り絞った。
お友達になるには、まず名前からだ!


「お、俺の名前、臨也っていうの。折原臨也、覚えておいてね、帝人君!」


じゃ!
と走り去るスピードは、さながら風のごとく。
呆然とその後姿を見送って、帝人はしばらくの後、はたと気づいた。




「あれ、何で僕の名前知ってるの、あの人?」



新たな疑問が生まれる夜だった。
?

作品名:コンビニへ行こう! 前編 作家名:夏野