春を呼ぶ・・・
春を呼ぶ・・・
春の陽射しが暖かいと、元親は空を振り仰いだ。
目の前の桜の蕾は、まだ小さくその身を固く閉ざしている。もう少しすればその身も大きく膨らみ軟らかな淡い薄桃色の花弁を現すのであろう。
元親はその姿を頭に思い浮かべながら、目を閉じ暖かな陽射しを感じていた。
するとふと、目を閉じている元親の顔に何かが落ちてきた。
「あぁ?なんだぁ?」
目を開くと目の前に紙片の短冊のようなものが自分の顔に乗っかっている。
いったい何処から?と空を見渡すと、目の端に見た事のある影。
「ありゃ真田の忍び?・・・佐助かぁ?」
元親はそう声を上げながら短冊に目を落とした。
『もう直ぐ春、まだ来ぬ春、皆で春を呼ぼうじゃないか!』
デカデカと短冊の真ん中にそう書かれている文字は良く知った文字。
「慶次?」
「そうだよ、元親」
「おぁぁぁ、いつから其処に?」
突然真後ろからした慶次の声に元親が飛び上がる。
元親が慌てて振り返るとにっこりと相変わらずの笑みを作った慶次が立っていた。
「今さっき来たんだ、
ねえ元親、皆で春を呼ぼう!」
慶次は元親にそう言うと自分の後ろを指差した。
「?!」
元親がそれに促がされるように慶次の後方に視線を流した。
「なんだぁ、皆・皆いるのかぁ?」
「元親殿ぉ!!来たでござる!」
「や、長曾我部の旦那、俺のコントロール抜群でしょ?」
「HA、俺はてめえと2人だけのほうがいいんだけどな」
「ふん、前田があまりにもしつこくうるさいから来てやったわ」
政宗・幸村・佐助・元就、それにその他見知った顔がずらりと並ぶ。
「なんだぁ、おめえらまで!」
「元親、俺も皆と絆を深めたい、なので混ぜてくれ」
「ふん、バカ騒ぎに興味はないがそこの前田の漂流者(もの)に無理矢理連れてこられたのだ」
家康と三成もそのなかに混ざっている。
元親は何がなんだかわからないように、慶次の顔を見た。
「ねえ、元親、まだまだ寒いこの寒空を皆で追い払って春を呼ぼう!!」
慶次が満面の笑みでそう言うと、大きな酒瓶を元親に手渡した。
「桜は咲かぬ、まだ咲かぬ?ならば春を呼ぼうじゃないか
踊る阿呆に、飲む阿呆、同じ阿呆なら騒がにゃ損損!!」
まだ来ぬ春を、皆で呼ぶ為に、熱い漢達の宴が今始まったのであった。
早くこの日本に春が訪れますように!!
いちご松林檎