ありがとう
「……仕事。」
「……そっかぁ。がんばってね。」
はじめまして。野森苺(ﾉﾓﾘｲﾁｺﾞ)です。
トシは私の彼氏。なのに、仕事仕事…って。もう、「仕事と付き合えよっ！」って思っちゃうよねっ！？
「うわぁーーーん！！トシのバカぁーー！！」
「苺……なに一人で叫んでるんでぃ。」
「そっ……総悟くん……」
最悪だよぉーーーーーー！！総悟くんに見つかったぁーーーーーー！！
絶対バカにされるよぉーーー！！
……でも、聞こえたのは総悟くんの切なそうな声。
「土方さん……ですかぃ？」
「え……？まぁ……。またお仕事だってぇ……。」
「さみしいんですよねぃ……。わかりやすよ……。」
バカにされなかった……。そんな優しい言葉かけられたら、こらえていた涙があふれた……。
「……っう…ぅぁ……ふぇーーーーーーーん！！！！！！！」
「そっ…そんなに大きい声で泣かないでくだせぇ！！俺が泣かしてるみたいでさぁ！！」
「うっ……ぁ……ごめっ……」
「……俺でよければ話…聞きまさぁ。」
「じゃあ、お願い……。」
その後しばらく、総悟くんが話聞いてくれて、「よしよし。」って、頭なでてくれた。
「そっ…総悟くんっ！？//////////」
「なぁに赤くなってるんでぃ。」
でも話聞いてもらって、少し気持ちが軽くなった。
「赤くなってないしっ！！意味わかんない！！……っでも、話聞いてくれて…ぁりがとう……。」
「ヘイ。どういたしまして。……まあ、土方さんと仲良くやりなせえよ。」
ズキッ……
「うん……。」
いま、心が痛んだのはきっと気のせい……。私はトシの彼女なんだから…。仲良くしろって言われるのは当然じゃんか……。むしろ喜ぶことでしょ……。
「総悟くんのこと……好きなのかなぁ……。………っあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！んなわけないじゃんっ！！ないないないない！！」
…………私と総悟くんの話してるところ。トシがみてたなんて知らなかった……。
…………私のこの言葉。トシがきいてたなんて知らなかった……。
翌日、私はトシに呼ばれてトシの部屋にいた。
「トシ、話って何？」
「……もう…終わりにしねぇか？」
……え…？何言ってんの……？
「もっ……もぉー！！なんでこんな冗談言うかなぁ！！トシったら！！」
「冗談じゃない。お前とはもう終わりだ……。」
ヤダ……嫌だよ……ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ…………
「嫌だよ……。なんで！？そんな突然！？昨日まであんなに普通だったじゃない！！な… んで…っ……」
「おまえ自分の気持ち……、気づいてねぇだろ。」
「はぁ！？意味わかんないし！！トシのこと好きに決まってるじゃん！」
「はぁ……お前が俺のこと好きでも、俺はお前のこと好きじゃねぇンだよ。」
パァンッ
私は、トシの頬を殴った。
「…っ最低……。トシのバカ！！そんなトシこっちからお断り！！さよならっ……」
……どうして？
終わりって言ったのはトシじゃない。なんでそんなに切なそうな顔するの？
でもそんなトシを無視して私はその場から走り去った。だから……
「俺だってお前のこと離したくねぇよっ……」
ってトシが言ったのに気付かなかった……。
……でも…、今思うと気づかなくてよかったのかな？
トシ……私はトシのおかげでホントの気持ちに気づけました。
私はあの後、一人で泣いていた。ふと足を止めてあたりを見回すと
「あぁ、ここに無意識のうちにむかってたんだ……。」
総悟くんの部屋に……
「総悟くん……？苺……。入ってもいい？」
「入りなせぇ。」
そこにはあのアイマスクを着けて寝ている総悟くんの姿。
「今日はどうしたんでぃ。土方となんかあったんですかィ？」
「フられた。」
「へぇ……、えぇッ！？」
そりゃぁ、驚くよね。
「なんか、『お前は自分の気持ちに気付いてない』とか、『おれはお前のこと好きじゃない』とか言われた。もう、わけわかんないよぉ……。ｸﾞｽｯ」
「そうだったんですかぃ。つらかったですねぇ。ここでなら思いっきり泣きなせぇ」
………その時私は気付いた。
『自分の気持ち』に………………。そっか………トシ、そういうことだったんだね……。
「ねぇ、総悟くん……。」
「ん？なんですかぃ？」
「あたしね、総悟くんのこと好きみたい。」
「ヘイ……。……えっ！？」
こういうことでしょう？
「トシの言った意味わかったよ。私は総悟君が好き。」
「……いいんですかぃ？俺で。」
「トシには悪いけど、私は総悟くんじゃないとだめみたいなの。」
「俺も……俺も、苺じゃないと嫌でぃ。」
「総悟くんっ！！ありがとうっ！！」
「おわっ！？苺！！？？」
私は嬉しさのあまり総悟くんに抱きついた。
その時突然聞こえたトシの声。
「やっとわかったか……。苺。」
その声はとても優しかった。
「トシ……。うん。わかったよ。ありがとうね。」
「総悟……。お前、苺を幸せにする覚悟はできてんだろうな。」
「お前に言われなくてもできてらぁ。……だが、今回だけは礼を言いまさぁ。
――――――――――――………『ありがとう。』」