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風神(ふうしん)
風神(ふうしん)
novelistID. 24430
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傷つけない ~円堂編~

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「円堂!!」俺はその声にドキッとする
胸の奥底をやわらかな羽根でくすぐられたような甘い気持ちになる
そして、そんな俺をよそに風丸は駆け寄ってきて
いつもみたいにきれいな笑顔で話しかけてくる

俺はどう接して良いのか分からなくなって思わず一歩下がってしまう
それでも風丸はきれいな笑顔のまま話しかけてくる
俺はその笑顔を壊したくなくて汚したくなくて、
でも風丸が大好きで大切で・・・こんなことをぐるぐる考えていると
風丸が何か聞いてきた、でも俺はバカだから
そんな二つのことをいっぺんに聞き入れることはできなくて、だからまた曖昧な返事をしてしまう・・・そして沈黙が生まれる・・・。

そんなとき「円堂!!」と豪炎寺の声が後ろから聞こえた
アイツは俺らが付き合ってることを知ってる
だから、たぶん助け船を出してくれたのだろう・・・
俺は豪炎寺に駆け寄って、小さく「助かった・・・」と呟く
すると、「バカか、おまえは・・・」とため息をつかれた。
そして、そのまま部活に向かった 



____________「あれっ!?風丸は~?」 俺がキーパーの練習をしていると
そんな声が耳に入った、
「さぁ~?見てねーよ・・・?」「休み・・・?」
「いや、違うと思うぜ・・・?」「そういやヒロトもいねーよな・・・」

(えっヒロ「へブッ!?」

「うわっ!!円堂大丈夫かよ!?」

「いッッ_________」

しまった・・・向こうで話してるやつに耳傾け前から
ボール来てるの気付けなかった・・・

みんながわらわら寄ってくる、俺はいつものように二カッと笑って
「平気 平気!!ちょっとトイレ行ってくるなぁ」と言い放って
その場を離れた。


ジャ___________キュッ
放課後の静まりかえった廊下に、水音や水道を止める音
すべてが鮮明に響く

「くっそぉ・・・」
何があったわけじゃない・・・
ただイライラする
「風丸・・・」
俺は無意識に呟いていた。

その時、
「風丸君・・・」  (ッ!?)
ヒロトの声がした・・・
俺の心はざわつきだす
なぜ今、ヒロトが風丸の名を呼んだのか
もしかして、今二人は一緒にいるんじゃないか
それなら、どこにいるのか・・・

さまざまなことが、頭を駆け巡る気付くと俺の足は声のした方に
向かっていた・・・

どんどん風丸たちの声が近付いてくる
「うっ・・・うぇっ」(ッ!?)
風丸の嗚咽が聞こえてき、俺の胸のざわつきはますます早まった・・・




「風・・・丸くん」
突き当りの角を曲がろうとしたところでもう一度
ヒロトの声がした、俺は足をゆるめてゆっくりと
角の向こう側を覗いく・・・

するとそこには目をそらしたくなる光景が広がっていた・・・

風丸がヒロトにもたれるように抱きついていて、
それをヒロとが受け止めるように風丸を抱きしめていた。

俺がどうしようか迷っているとヒロトの声がした
「風丸君・・・俺じゃダメなの?」
(やっぱりヒロトは・・・)
俺は前からヒロトが風丸を狙っているのは知っていた・・・
でも、ヒロトは約束してくれたはずだ
”風丸にはもう手を出さない”と・・・
だから、俺も信じていたヒロトのその言葉を、なのにどうして・・・

俺は早まる心を抑えて息を殺した・・・
「俺にしときなよ・・・」ヒロトが風丸をさらに強く抱きしめた

俺は今すぐ二人のそばに駆け寄って二人を引き離したいのに
ヒロトを突き飛ばして、風丸を抱きしめたいのに・・・
足が固まって動かない・・・

(風丸ッ____________!!)
心の中で声にならない声で大好きな人の名を叫ぶ・・・
何度も何度も・・・

でも、風丸には届ずに俺の心の中でただむなしく反響するだけ
ヒロトの顔が ゆっくり風丸に近づいていく・・・
俺は、駆け寄りたいのに
”やめろ!!”と叫びたいのに
体が固まって動かない・・・

ヒロトの唇が風丸の唇と重なる・・・
その瞬間 俺の心の中で何かが音を立てて崩れ去った気がした・・・

(やめろよ・・・)叫んでみてもバカみたいに心の中で反響するだけ・・・

俺がただ茫然と二人を見ていると、
風丸とキスしたままのヒロトがゆっくり目を開いた
そして目だけをこっちに向けて俺を見た・・・・
その目は恐ろしいほどまっすぐで透き通っていた

そして何より、(風丸は渡さない)と語っていた____________________________