赫く散る花 - 桂 -
戦で地獄を見た。それに罪を犯したからいつかその報いを受ける日が来るだろう。だが、その地獄でいろいろなことを学んだし、大切なものを得た。
それらはどんなものにも代え難いものだ。
平穏な人生への憧れはあるが、それとはまったく違ってしまっている今にも確かに幸せはある。
「え」
銀時は眼を見張り、立ち止まった。
けれど、桂は足を止めず、歩き続ける。
少しして。
「おい!」
銀時が追ってきた。
「ヅラ、お前ェ熱でもあるんじゃねェのか」
「ヅラじゃない、桂だ。それに熱なんぞない」
桂はきっぱりと告げる。
すると、隣で銀時がかすかに聞こえる程度の声でなにか言う。
俺も幸せです。
そう告げた。
どうしていきなり敬語なんだ、と桂は思ったが口には出さないことにする。
黙ったまま、眼を桜のほうに転じた。
咲き誇る桜の花。
吹く春風に、ハラハラと花びらを散らした。
作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio