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May our love last foever【サンプル】

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澄んだ高い空にゆったりと雲が流れる。穏やかな風が浅黄色の髪を揺らした。
 なんて平和なのだろう。
 風丸はそう思った。
 崩落した建物は何事も無かったかのように綺麗な姿でそびえ立ち、穴だらけのグラウンドは元通りに埋め立てられ、その上で皆がボールを追い掛け回している。
 ほんの少し前まではこれが当たり前の光景だったのだ。エイリア学園と戦い、地球の未来を賭け奔走するまでは。
 未知の力に恐怖した風丸は力を求めた。
 それは愛する者の為だったのだが結果として彼を更に苦しめた。何度後悔しただろう。
 心に蓄積されていく鉛は消える事無く積まれていく。それは風丸の心身を鈍らせた。
「風丸!」
 突如掛けられた声に振り返ると、精悍な顔に白黒のボールが当たった。痛々しい音を立て仰向けに倒れる風丸の元へ、恋人が駈け寄ったが風丸の意識は深いところへ落ちていってしまい気付く事は無かった。

 風丸が目を覚ますと、まず白いカーテンが見えた。そして身体の半身に重みを感じ、そちらに視線を移せば鳶色の髪がシーツに散らばっていた。
 すーすーと気持ちよさそうな寝息を立て、風丸の肩に顔を埋めている。
 心が温かくなり、風丸は無意識に笑みを浮かべた。
「円堂……起きろよ、円堂」
「んー……」
 優しく声を掛ければ円堂は眠そうに身じろぎをする。その様子が猫のようで風丸はくつくつと静かに笑った。
「ほら、起きろって。もう練習は終わったのか?」
「……んあ? 風丸……起きたのか。部活は終わったぜ」
「こっちの台詞だ。何寝てんだよ」
「疲れてたし、そしたらベッドが……」
 目を擦りながら円堂は身体を起こす。風丸は肩の筋肉が張ったくすぐったい痺れを感じ、顔を僅かにしかめながらゆっくりと起き上がった。
「だからって爆睡すんなよ。あ、よだれ」
「げ、まじで!」
「冗談」
 円堂はぽかんと呆けるが数秒後、からかわれたのだと気付き、顔を真っ赤に染める。
 風丸は可笑しそうに笑った。
 円堂もつられたように笑ったが、直ぐに黙り込んでしまった。風丸が不思議そうに声を掛けると円堂は帰ろう、と一言残し、先に保健室を出た。
 風丸が着替え終わり、部室から出ると、そこには壁に寄り掛かった円堂がいた。
「悪い、待たせたか」
「いや、そんじゃ帰ろうぜ」
 円堂は風丸が倒れていた間、どんな事をやったのか身振り手振りで説明した。
 擬音混じりなそれに風丸は薄く笑いながら答える。いつもならば風丸の常識的な返答があるのだが、今日は一度も無く、円堂は思わず閉口した。
 円堂が口を噤んだ事を気にも止めず、風丸はゆっくりと彼の隣を歩いた。
 夏の太陽は早く沈み、辺りはもう薄暗くなっていた。蒸されるような熱さに、じんわりと汗が滲む。ふと、風丸の視界に電球の切れかけた街灯にたかる蛾が映り込み、不快な気分が増した。
「――風丸」
「え、な、なんだ円堂?」
「話したい事があるんだ。今日は俺の家、誰もいないから泊まっていけよ」
 突然の円堂の誘いに、風丸は疑問を抱きながら承諾した。

「お邪魔しまーす」
 誰もいないと分かってはいても、律儀な風丸はつい口にしてしまう。円堂はそんな風丸の姿を見て苦笑し、先に自室でくつろぐよう促した。
 何度目かの円堂の家は、以前に来た時と少しも変わらず、相変わらずだと風丸は思った。
 鞄を床に置き、水色の掛け布団が敷かれたベッドに腰を下ろす。昔から何度も座ったり寝たりしたおかげで、スプリングが唸るのも今では気にならない。
 部屋の隅に転がるサッカーボールを手元に引き寄せ、抱いてみると不思議と心が落ち着いた。
「お待たせ。何やってんだ?」
「いや、特に意味は……」
 自分でもなんでそんな行動をしたのか分からない風丸は曖昧な笑みを浮かべた。
 円堂はさして気にした様子も見せず、風丸の横に座った。
 二人分の体重にベッドが悲鳴を上げるがいつもの事だ。
「それで、どうしたんだ? 俺を泊まりに呼ぶって事はなんかあったんだろう?」
 風丸が話を切り出すと円堂は言いにくそうに口をもごもごとさせ、じっと緋色の瞳を見つめる。
 円堂の黒曜石のような瞳には風丸が、風丸の紅玉のような瞳には円堂が鏡のように映った。
「円堂……」
「ん」
 啄ばむように口づけると、円堂はくぐもった声を漏らす。風丸はそのままベッドに円堂を横たわらせようとした。