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I controlled my ×××.

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痛いですか。
痛いよ。

秘密の話を伝言しているように控えめな声音で訊ねられるそれに、幾度も僕は合い言葉じみた同じ調子の言葉を返す。
若干遠慮しているかのような、それでいて配慮の今一つ分足りない手付きで手当をされていた。
適当な大きさの、清潔そうな真っ白色したガーゼに個性的な匂いのする消毒液を染み込ませ傷口に擦り込ませていく、大変真面目な面持ちをする顔がとても近くにある。…近過ぎやしないだろうか。
体中あちこち疼くけれど、まずは表に晒していて目立っている顔面の手当から優先されている。傷が各々に熱を持っては思考が鈍る。少しでも身じろぎすれば、一度体験した痛みの何分の幾つかを思い出させるようにして痛覚が跳ね泳ぐ。
いっそ感覚が麻痺してしまえればと思うけれども、持ち帰った参加証を捨て置くのは惜しむ心の部分があるので。
親切に手当を申し出た青葉くんが至近距離で行っているものだから、時折吐息が過敏になった肌をなぞっていくように、例えるなら愛撫のように触れてきて仕方ない。ただしその両の目は何かしら抑えているような、言いたいことやしたいことがあるように感じて困らせてくる。
切れた額から垂れる血を大体の目安で拭い傷口を消毒し、じゃきん、と身を竦ませる音で鳴いた鋏で裁断したガーゼを当ててくる。鼻の粘膜が弱いのか毎度血の跡で化粧のように引く部分もぐいと小ざっぱりにし、無事の頬骨を、熱くもなく冷たくもない、言い換えようのない質感の手のひらが摩りゆく。
受け身を取れず打ち付け赤くなった鼻先を、軽く様子見のように指先でつつく。殴られた際に切り傷の出来た唇を、様子見のように指の腹でもって確かめる。吐息が唇を撫でるのはどうにも居心地が疼いて、今にも隙間から零れそうな自分の吐息が相手のものと混じってしまいそうで目を開けていられなくなった。
それで目に蓋をすると、ちゃんと見張っていて下さいと言われた。
何を?
訊ねればノーコメントが返答として渡されて、浅く推し量るにどうやら失言であったらしい。
悪戯しちゃいますよ。
言い訳のように上書きされる。
それはそれは困ったことになるやもしれないので、敢えての追求はやめることにした。気にはなるけども。開き直られたら不味いとも思い至ったので、やはり構わないことにした。とても気にはなるけども。
幾度目かのこれを経れば嫌でもこう思うしかない。きっとこのこそばゆさに賞味期限はないのだろうなって。
作品名:I controlled my ×××. 作家名:じゃく