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オールナイトな恋して(レオさな)

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「行ってみたいなぁ…」


 彼女のつぶやきに、思わず焦って机を膝で蹴ってしまった。目の前にいた彼女が目を丸くして「大丈夫!?」と聞く。誰のせいで僕がこんなに焦ってるかは全く気づいていないらしい。首を縦にふってみせると、さなえちゃんは安心したようにふわりと笑った。そして、再び頬杖をついてミルクティーの入ったカップの底を混ぜる彼女を見て、気づかれないように息をつく。

(まったく、自覚がないってのは怖いな…)

 テーブルの上に置かれた紙束を見つめ、溢れそうになったため息をグッと飲み込む。今週末のオールナイトイベントのフライヤー。縁あってそこでDJをやらせてもらえることになったのだ。
 DJは楽しいし、イベントに出させてもらえるのは有り難い。だからフライヤーを配ったり周りの人たちを誘うくらいの手伝いは喜んでするけど、けど正直今持ってくるのはやめてほしかったなぁ。目をきらきら輝かせてフライヤーを読むさなえちゃん。次に発する言葉は読めてる。


「ねえ、行ってもい…」
「だめ」


 間髪入れずに用意してた単語を繰り出す。視界の端で彼女の頬が膨れる。


「なんで?」
「――危ないから。女の子が一人でオールなんて危険だよ」
「でも…」
「だーめっ」


 なおも反論しようとしてくる彼女の眉間をツンとつついて席を立つ。支払いの紙とフライヤーの束を抱えて歩き出すと、不服げだけど、僕の態度が気になるのか少し不安げな顔した彼女が慌てて追いかけてくる。


「…私がイベントに来るのそんないや?」
「まさか」


 すごく嬉しいけど、不安なんだよ。


「…イベントの間は君についててあげられないから」
「? レオくん、今なにか言った?」
「なんにも」


 こんな僕の幸せと心配は、君は知らなくてもいいよ。
(――だって、そりゃあ恥ずかしいから)