恋人?
何処にいるんだい?アルの大きな声がアーサーの家中に響き渡る。
「君は何なんだい?俺を呼び出しておいて・・・」
文句を言いながら部屋に入っていく。
寝てる?アーサーは机にうつぶせになって寝ていた。
「・・・寝てるのかい?」
アーサーは何も答えない。
「えー・・・勘弁してくれよー俺も仕事が残ってるんだぞー・・・」
起こした方がいいか、そのままの方がいいか・・・アルの頭のなかにこの2択がうかんだ。
「起こしたら文句言われそうだし・・・」
アルは少しだけ眺めとくことにした。
「ん・・・アル・・・」
「アーサー起きたのかい?」
「って・・・ただの寝言か・・・」
アーサーの家にきて何分たっただろうか、アルはゆっくりと流れる時間の中をアーサーを眺めて過ごしている。
「昔は一緒に暮らしていたけど・・・今はアーサーより大きくなって、不思議なんだぞ。」
アーサーの額をピンとつついてみても起きようとしない。
「何で・・・独立なんかしたんだよ・・・」
「え・・・?」
泣いてる?
いつのまにかアーサーは泣いていた。
「そういえば・・・なんで独立したんだっけ・・・」
(多分・・・立派になった姿を見てほしかったからだよ・・・)
「そんなこと・・・昔のことなんだぞ・・・」
(絶対に独立した理由なんか、アーサーの前では言わない。
理由を言った時点で君との関係が変わるものでもないんだぞ・・・)
「・・・アル、俺は何か悪いことをしたのか・・・?」
「おーい、アーサー何年前の夢を見てるんだい?」
空気が重くなってきた。
アルが1番苦手とする空気だ。
アルはそれに耐えられなくなって、アーサーを起こすことにした。
「アーサー起きるんだぞー!!俺は君の家に来たけど、何をすればいいんだい?!」
「うるせーなぁ・・・」
「って・・・おーい!うるせーなぁ・・・は酷いんだぞ!!」
「・・・っ・・・ア、アルフレッド?!」
「やっと起きたのかい?だいたい1時間くらいは寝てるんだぞ!!」
「なっ、何で起こさないんだよばかぁっ!!」
「え・・・なんでって・・・気持ちよさそうに寝てたから、起こさなかったんだぞ!」
「そうかよ・・・」
「・・・?」
数秒間静かになる。
「そういえば、君泣いてたんだぞ。どんな夢を見てたんだい?」
「っ・・・こ、怖い夢だ・・・」
「どんな?」
「そっ、それは関係ないだろ・・・」
「俺は知りたいんだぞ。」
「お前が独立した時の夢。」
「君にしては素直なんだぞ・・・」
「なっ・・・素直で悪いのかよ・・・」
「悪いんだぞ。」
「はぁっ?!」
「俺は素直じゃないアーサーの方が好きなんだぞ・・・」
アーサーの顔が少しだけ火照ってきた。
(俺変なこと言ったのかい・・・?)
「あっ・・・あのよ・・・」
「なんだい?」
「紅茶飲むか?っていうか、飲め。」
「えー紅茶かい?シェイクはないのかい?」
「あるわけねぇだろ。なんたって俺は紳士だからな。」
(さっきのアーサーはなんだったんだろう・・・
こっちが少し動揺するじゃないか・・・)
「アル?どうしたんだ?」
「なっ、何でもないんだぞ!!」
「なっ・・・ならいいけどよ。じゃあ、紅茶飲めよ。俺が入れてやったんだからな。」
(そうだ、これが普通のアーサーなんだぞ。
たまに素直になって、少し変わった性格。)
「かっ、勘違いするなよ!俺はお前に紅茶を入れたんじゃないんだからな!!」
「知ってるよ。」
「ならいいんだよ。」
(俺、最近おかしいんだぞ・・・
きっと・・・君の性格がうつったんだぞ・・・)
「アーサー・・・君は俺のことをどう思ってるんだい?」
「なっ、なんだよいきなり・・・」
「アーサーの中では、まだ俺は弟なのかい?」
「・・・。」
「アーサー?」
「ちげぇよ・・・俺にとってお前は・・・」
(やっぱりだ・・・君の性格がうつった・・・
初めてなんだぞ・・・こんな気持ち・・・これが「恋」っていうものなのかい?)
「恋人。」
「は?アル・・・どうした・・・?好きな奴でもできたのか?」
「俺にとってアーサーは恋人なんだぞ。」
「・・・。」
「俺はずっと前からアーサーのことが・・・」
「それはこっちのセリフだばかぁ!!」
「え・・・?」
「俺だって・・・お前のことが好きなんだよ!!」
「え・・・え・・・?」
「俺が言おうとしたらおまえがいきなり、恋人なんかいいだして・・・」
「ごめんなんだぞ・・・。でも、おれだってアーサーのことが好きなんだぞ!!」
(そうだ・・・君から独立したもう1つの理由。
君と、家族じゃなくて恋人として関係を築きたかったから。)
「キスしたいんだぞ。」
「お前なに言って・・・」
それからどうなったかって?
それは2人だけの秘密なんだぞ。
でもきっと俺はこれから、アーサーを恋人として大事にしていく。
絶対に・・・悲しい思いなんてさせないんだぞ。