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感傷的精神論

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胸ポケットを探ると中身のないシガーケースがかさり、と音を立てた。
チッ、と舌打ちをする。胸ポケットからそれをとり出すと、握りつぶす。大量生産された紙製のケースはくしゃりと音を立てて丸まった。原型のなくなったそれをポイとテーブルの上へ放る。


いま俺はこれ以上ねえってくれェ機嫌が悪い。煙草を買いに行こうにも外は雨だった。濡れんのは好きじゃあない。もちろん傘なんて持っていない。思わず腰かけたソファの目の前にあったテーブルを革靴で蹴る。ガタン、と音を立ててそれはひっくり返った。先ほど放り投げた紙屑も重力に従い、フロアの上へと転がる。ああイライラする。イライラの原因は分かっていた。


「プロシュート、荒れてるねえ」


いつの間に沸いたのか人を小馬鹿にしたような顔で話しかけてくるのはドのつく変態、メローネだ。
当たり前のような顔をして俺の後ろ、ソファの背もたれに両肘を乗せて頬杖をついてニタついていた。


「うるせェどっか行け」


コイツのいつもニヤニヤした顔で傍観者ヅラしてるところが俺はどうも苦手だった。


「なんでそんなイライラしてるの?生理?」

「死ね」


コイツのこうゆう下品なところも嫌なところの一つだった。そーゆーことしか考えられねえのか、クズが!
ニヤニヤした顔のままメローネは言葉を継いだ。


「もしかしてもしかしなくてもリーダーのことでしょ。」


グッと不覚にも喉が鳴ってしまった。それが聞こえたのかこのド変態野郎は笑みをますます深くした。


「図星?」

「意味わかんねえ。アホか」


俺がそういうとメローネはフーンそうなんだー、と何やら含んだふうに言う。語尾を伸ばすな、気色悪い。


「何が言いてえ」

「最近リーダーとセックスしてないでしょ」


歯に衣着せねえってのはまさにこのことだな、じゃなくて。俺は思わずメローネの胸倉をつかむ。


「何だと!?」

「てゆーか会ってないよねェ~2日と空けずにエッチしてたのにそれじゃあイライラもするわけだ。アハハ欲求不満ってやつー?」


俺に掴みかかられているというのにこいつは相も変わらずヘラヘラ面を崩しやがらねえ。イラつく!


「フフフ なんで知ってんだって顔~俺の能力忘れた?盗聴覗きはお手の物だよ」

「・・・」


もう何てゆーか呆れて言葉も出なかった。つーかこいつなら納得だ。


「趣味悪ィ」

「アジトでそーゆーことするのがどうかと俺は思うよ」


こいつにまともに取り合ってんのもアホらく思えてきた。メローネの襟ぐりを掴んでいた手を離すと足を組んで座りなおした。胸ポケットに手を伸ばす。何も入っていないそこに、そういや煙草を切らしてたんだったと思いだしてまた一つ舌打ちをした。


「リーダーの今回の仕事長いよねェ。3週間だっけ。」

「明日でひと月」


今リゾットは大きな仕事を任されている。ボスが直々に、リゾットが遂行するようにと与えた仕事だった。ダーゲットは隣国政府の要人。俺も詳しく聞かされていないが時間も手間もかかりそうな、慎重を必要とする任務だ。俺とギアッチョは気が短い。ペッシはマンモーニ。イルーゾォはメンタルがな…。目の前のコイツは変態。ホルマジオは別の件を持っていた。となると打ってつけはリゾットしかいないわけだ。敵対するそんじょそこらのギャングを殺んのとは話が違う。
メローネはソファの後ろから動くと俺の横に足を組んで座った。


「・・・横に座んな気色悪ィ」

「さみしくないの?」


俺の言葉を無視して変態はそう尋ねた。
アホか。俺たちは殺し屋だ。寂しいだの何だの、そんな感傷で人を縛り付けるなんて女々しいこと出来るわけがねえ。いつ死ぬかもわかんねえ俺たちが一時でもそんな感情抱いてみろ。恥だ。ん?なんかコレ俺が本当は寂しいみたいじゃねえか?違う。そうじゃなくて仮にの話だ。


「伝わらないよ」


唐突にメローネがそういった。


「は?」


変態のほうを見ると、珍しくマジな顔をしていた。


「思ってるだけじゃあ、伝わらないって言ってんの。」

「何言っ、」

「確かに俺たちは殺し屋だ。明日死ぬかもしれないし、5分後に死ぬかもしれない。だからこそ感じたこととか言いたいこととかは表に出さなくちゃあさ、死んだときに、」


成仏できないよ。そうメローネが言った。
成仏、だなんてブッディストでもあるまいし。
でも確かに・・・コイツの言うことは少し分かる気がした。
だがしかし俺の考えとは相容れない。何て言うか真逆だ。
いつ死んでもいいようにすべてを曝け出して生きるというメローネと、いつ死んでもいいように恥を残さないように何も感じてない振りをして生きる俺。やっぱり俺らしいのは後者だ。

でも偶には…


「ハハッ」

「…どうしたのプロシュート。頭沸いちゃった?」


メローネが首をかしげて俺を見る。


「オメーとは一生合わねえだろうな変態。」

「うるさいよ」


リゾットの任務が終わるのはあと1週間後。帰ってきたら甘えてやんのも悪くねえかな、そう思いながら窓に目線を遣ると、雨はもう上がっていた。俺は煙草を買うために、うるさい変態を残して出かけることにした。

(20110404)
作品名:感傷的精神論 作家名:足藻