ドントリーヴミーアローン
事故死でも病死でも、誰かに殺されたわけでも自分からその道を選んだわけでもない。文字通り、ルルーシュというひとつの自我同一性がこの世から消えてしまったのだ。
「ルルーシュ、」
僕は堅い石の寝台に横たわる身体――それはかつて確かに”ルルーシュ”の容れ物だったものだ――を見つめる。胸はかすかに上下し、その美しい、世界一の人形師が命を削って作った極上のマスターピースのような、きれいな容れ物がまだ、完全に死んではいないことを教えている。だが。
(るるーしゅの、たましいが、しんでしまった)
肉体はそこにあるのに。確かにあるのに。
最初は僕も信じられなかった。しかし緑の魔女が、それが真実であることを教えてくれた。事実、身体は温かいのに、一向に目を覚ましてくれないルルーシュを見て、それが真実であると信じざるを得なかった。
(ぼくの、ルルーシュ)
ルルーシュは僕を置いてどこへ行ってしまったのだろう。身体と分かたれてしまった、彼の魂は。君の宝石のような瞳は開かれることはなく、誰の耳にも心地よく聞こえたテノールもそれを響かせてくれることはない。
ルルーシュは、死んでしまった。
(あいしていたんだ、)
少なくとも、君のいなくなったこの世界が、色褪せた何の価値もないものに思えるくらいには。
(20100727)
作品名:ドントリーヴミーアローン 作家名:足藻