大好きだよ
ごめんなさいと言い続けながら。
スカートをぎゅっと握り締めた。
先生は軽蔑の眼差しで俺を見下ろしている。
ごめんなさい、先生。
こんな感情抱いてしまってごめんなさい。
俺は、先生が大好きなんだよ。
軽蔑してもいいよ、嫌ってもいいよ。
でも俺は先生が大好きなんだ。
苦しくなるくらい、息が詰まりそうになるくらい、先生が大好きなんだ。
涙で濡れてべたっと頬に張り付いた俺独特の髪の毛に先生は触れた。
先生の冷たい手が頬に張り付いた髪を剥がしてくれた。
先生は少し悲しそうな顔をした。
そして俺の頭をくしゃと撫でた。
「君が、私が、生徒と教師じゃなければ…ね。」
「先生は、俺の事…好き?」
先生は瞼を閉じて少し微笑んで、好きだよと言った。
ぶわっと更に涙が出た。
こんな捻くれた、馬鹿な生徒だったのに。
先生にいつもタメ口で授業に遅刻してたのに。
先生が時間を削って俺に個別指導するくらい馬鹿だったのに。
先生は優し過ぎるよ。
それに先生は綺麗過ぎるよ。
女なのにがさつで可愛くない俺と違って先生は大人しくて綺麗。
俺なんか釣り合う訳ないのに。
来年からクラスの先生が新しく変わって先生が別の教室行っちゃうだなんて。
言うの遅いよ。
もう来週にはいないんでしょ?
ならさ、今かなって思って告白したんだ。
俺はやっぱり馬鹿だから、後先の事なんて考えてなかった。
結果、先生を苦しませてしまった。
ごめんなさい先生。
「俺…、塾辞めるんだ。」
俺も実は来年から別の塾行くんだ。
理由は、そっちの方が安いから。
冗談じゃないと両親に言ったが、もう手続きはしたみたいで遅かった。
でもどうせ先生がいないなら、いいよ、もう。
先生はちょっと驚いた様子を見せた。
そしたら今度は飛び切りの笑顔でうんと言ってきた。
だから涙を拭って笑顔を見せてやった。
「来月の1日此処に来てよ。」
「別に良いよ。」
もう君は生徒じゃないんだしと先生は付け足した。
「そしたらまた告白する。Okしてくれる?」
先生は苦笑して、どうかなと言った。
生徒と教師じゃなくなったその時、また貴方に想いを伝えるから。
だから、絶対、来てね。
先生が大好きだから、それは変わらないから。
先生、本当に貴方が大好きです。