愛してるなんてさ
「ばか。」
いつものように何かが気に食わなくて勝手に風介は怒り出した。
でも、その目には涙が浮かべてあったわけで。
俺はいつものように風介を抱きしめる。
風介はじたばたと暴れたが、俺はそれを吸収した。
するといきなり風介の蹴りが腹に直撃した。
げほっと俺は抱きしめていた力を抜いてしまった。
その隙に風介は俺の腕の中からするっと抜けた。
「ばか。」
風介は俺の腕をぎゅうと握り締めた。
痛い、痛い、痛い。
こいつ、俺の腕を引き契るつもりだ。
「私を愛してないのに、その腕で抱きしめないで!!!」
風介はそう叫んだ。
俺の腕に風介の涙がぽたりと落ちた。
愛してるよ、誰よりも。
昔から、ずっと。
でも、あんたは運が悪かったんだ。
いきなりガゼルになってダイヤモンドダストのキャプテンになって雷門に引き分けて。
挙げ句の果てにはあのお方からも見離された。
ヒロトにずっと想いを寄せていたのに、グランになってジェネシスになって、敵になってしまった。
俺とヒロトは勝手に沖縄に行ったりして。
雷門と引き分けた次の日にダイヤモンドダストの寮に潜入してガゼルの部屋に俺は行った。
ガゼルは部屋の隅で体育座りをして膝に顔を埋めていた。
俺はあの時何も言えなかった。
愛してるすら言えなかった。
風介がヒロトを想っていたのを知っていたから尚更。
ガゼルに何もしてやれなかった。
ごめんな、風介。
あんたがそんなボロボロになったのは、俺達のせいだもんな。
ごめんな、風介。
あんたを愛してたのに何も出来なかった。
だから、エイリア学園が無くなった時風介を守っていこうと思った。
やっと愛してると言えた。
でも風介は、そんなの信じられないと言った。
そりゃあそうだよな。
言うのが遅すぎた。
でも、あんたはどんなにボロボロになっても自分の力で立ち上がるんだよな。
凄いよ、本当。
だから益々好きになっちまうんだろうが。
俺は風介の手に自分の手を重ねた。
「愛してなきゃ、一緒にいないさ。」
「私がボロボロだから私を愛してると言うんだろう?私が元気だったら愛してるなんて言わないんだろう。」
「俺はあんたが昔からずっと大好きだったんだ。あんたが元気だった頃から、ずっと。」
あんたに元気になってほしいから今此処にいるんだ。
「あんたが元気になるならこの腕くれてやるよ。」
あんたと笑い合えるならこんなの安いよ。
「ごめんね、晴矢。」
風介は俺の腕から手を離した。
そして俺の体にしがみついてきた。
肩に顔を乗せてひっぐと泣きはじめた。
俺は風介の顔を上げて涙で濡れた風介の唇に自分のそれを重ねた。
初なのにしょっぺぇよ。
レモンなんて迷信じゃねぇか。
「有難う、晴矢。愛してるよ、晴矢。」
そう風介はとびきりの笑顔を見せた。
この笑顔がいつも見れるように俺があんたを守るから。
あんたの側にいるから。
あんたを淋しくさせないから。