貴方は
「こんにちは。」
「あ、倉掛。」
私は真っ白いベッドの横にある椅子に座った。
そして手提げから林檎と果物ナイフを取り出して林檎を剥きはじめた。
厚石があまりにもそれをじーっと見てくるものだから何だかくすぐったくて、言葉を発してみた。
「南雲さんは?来たの?」
「昨日ちらっとね。」
彼ははかなげにそう微笑んだ。
彼によれば南雲さんは厚石が入院してるというのに三日に一回くらいのペースでしか来ないらしい。
しかもちらっと顔を見せるだけ。
エイリア学園が無くなる前までは毎日来ていたらしい。
幼なじみで特に仲が良いのだ。
でもエイリア学園が無くなってからあまり顔を見せなくなったという。
理由なんて直ぐ分かる。
風介さんがいるから。
風介さんは本当に可哀相だった。
同情とかそういうのじゃなくて。
雷門に引き分けてお父様に見離されて。
多分孤独感を感じていたのだろう。
グラン様とバーン様より劣っている自分がマスターランクに居ていいのかと相談しに来た時もあった。
あの二人が勝手に沖縄に行ったと思ったら雷門と戦う嵌めになって。
ガゼル様はもう精神的にボロボロだった。
唯一信じていたお父様にあんな事言われたら貯まったものじゃないだろう。
誰を信じればいいのか分からなくなった筈だ。
敵だったバーン様だってガゼル様を助けたいと思ったのだろう。
それがザ・カオスという形になっただけで。
抑、南雲さんとはお日様園の頃から仲が良かった訳ではなかった。
向こうが話し掛けて来たりするだけで特別何もなかった。
私が南雲さんの想いに気付いたのは風介さんがガゼル様になる直前だった。
多分、南雲さんは自分自身でも気付いてなかったのかもしれない。
風介さんが好きだったなんて。
バーン様とガゼル様は本来敵同士だからバーン様も駄目なんだと思ったのだろう。
だからエイリア学園が無くなった今、風介さんを必死に守ろうとしているのだ。
風介さんを孤独にさせないようにしているのだ。
私には南雲さんの気持ちなんて分からないけど、私だって守りたいよ。
でも、風介さんには南雲さんがいる。
風介さんはいきなり怒って泣き出す自分を包み込んでくれている南雲さんに依存している。
風介さんは私がいなくても大丈夫なんだ。
厚石はどうだろう?
幼なじみが風介さんに取られて嫉妬しているだろうか?
嫉んでいるだろうか?
厚石の気持ちが知りたい。
「貴方は風介さんの事どう思う?」
「ボロボロになっても立ち上がるあの人は凄いよ。だから晴矢も惚れたんだろうな。」
嬉しかった。
嫉んでなんかいなかった。
良かったと安堵した。
この人は今淋しいだろうか?
病院で一人きりの彼は、今どんな心境だろうか。
多分、誰かに一緒にいてほしいのだろう。
南雲さんがいないなら私がいればいい。
私なんかじゃ駄目かもしれないけど、いてあげたい。
「倉掛がいるから淋しくないけどね。」
私が側にいなくちゃと胸に誓った。
本当は私が貴方の側に居たかっただけなのかも。
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厚倉好きだあああああああああああああああああw