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じゃあもう一度だけ信じてみます

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やっぱり無理だったんだよ。
やっぱり駄目なんだよ。
ただでさえ、バーンとガゼルだった私達なのに。
更に男同士という条件まであるんだ。
それなら無駄な期待なんかさせないでよ。
「あんたの側にいるから。」なんて言わなくても良かったのに。
そしたら私はもっと楽になれたのに。
24歳になった今はそんな事忘れちゃったのかな。
そうだよね、もう社会人だもんね。
それに君は彼女がいるんだもんね。
確かにその彼女は良い子だし顔も良いよ。
昔から君の事好いていて私を嫉んでいたんじゃないかな。
でも、今は立場が逆転した。
彼女だったら君を幸せに出来るよ。
私じゃ君を幸せになんか出来ないよ。
でも、私は君と彼女がくっつくのを願う程お人よしじゃないしそんな綺麗事を言えるような良い人間じゃない。
薄汚れて醜い人間なんだよ。
私、君と出会わなきゃ良かったな。
君と同じチームに入るんじゃなかったな。
そしたら君も私もお互い特に関心もなくてお互い楽になれて私はあの時君に止められないまま死ねたのに。
あの時、何で君は私を止めてしまったの?
結局は君も私から離れていくんじゃないか。
もう誰を信じたらいいの?
私は孤独になると駄目な人間なんだ。
今、この手紙を見て私を好いて、私の側にいてなんか願っちゃいない。
こんなだらだらと言葉を並べてみたけど、言いたい事はただ一つ。
私は君が誰よりも好きで愛していました。
結局は私達が結ばれる事なんかない。
私達がずっと一緒にいられる訳がない。
それだけの事なんです。
ごめんなさい、私は弱くて億劫な人間です。
ごめんなさい、君に変な心配をかけてしまって。
これは君に送る最後の手紙です。
もう私達は一生会わないでしょう。
否、会ってはいけない。
お互い別の道を歩まなければならないんだ。
それでも何かの拍子で会ったとしても他人のふりをしてください。
私は私なりに生きてみたいと思う。
ごめんね、有難う、晴矢。





手紙を封筒に入れて身支度をして手に封筒を握り締めながら家を出た。

あいつは何を考えているんだ。
どうせ生きるとか言ってまた死のうとするんじゃないのか?
俺が杏に抱いてる想いは恋じゃないのなんか知っている。
だからつい先日別れを告げたばかりだ。
ただあいつの連絡先なんか分からないから知らせなかった。
もう会えないのかな。
なぁ俺も好きだったんだよ風介。
なぁ風介、あんたは俺をどう思ってるんだよ。
あんたが醜いのなら俺も醜い。
あんたが薄汚れているのら俺も薄汚れている。
俺等は鏡なんだよ。
お互い正反対なのにお互いの共通点が多いんだよ。
そんな不思議な関係だったからかな。
俺と風介の関係があまりにも脆くて、いつもボロボロなのに完璧には壊れない。

「あ、」

やっぱり俺達はまだ繋がっている。
前方に見えるのは愛しき彼の後ろ姿。
よろよろとふらつきながら歩いている。
その足は確かに川に向かっていた。
かつて彼が自殺しようとした川だ。
その川に彼の足が入った瞬間俺は手を伸ばして風介の肩を掴んだ。
風介の肩がびくっと揺れて風介はこちらを振り返った。

「はる…わっ!!」

風介はバランスを崩して俺と共に川にぼちゃんと落ちた。

浅くて良かった…。
風介の両肩を今度はがしっと掴んで風介と向かい合わせに川の中に座った。

「あんた、何しようとしてた。」
「何で…、此処に来たの…。何で…、見て見ぬふりしてくれなかったの…。」

風介は下を俯いてボロボロと涙を流した。

「出来る訳ねーだろ。俺はあんたが好きなんだから。」
「嘘。」
「杏とだって別れたんだぞ!?」

これには驚いたのか風介は暫く黙った。
そして肩をわなわなと震わせて言った。

「止めてよ。どうせ信じたっていつか何処か行っちゃうんだもん。無駄な期待させないで。私をたぶらかさないで。私はもう晴矢と会いたくなかった。」

別に無駄な期待をさせようとしたわけじゃない。
俺はもう何処にも行かないよ。
俺はあんたをたぶらかした覚えはないよ。
会いたくなかっただなんて言うなよ、傷付くだろ?
嗚呼あんたは既に傷付いてたんだったな。

「俺はあんたに会いたかった。あの手紙で最後って空しいじゃないか。」

わざとにかっと笑ってやる。
風介は涙で濡れた顔をゆっくりと上げた。
その隙を見計らって俺は風介にキスした。
風介は唇が離れた後、目を泳がせてまた俺をじっと見た。

「信じても、良いの?」
「もう何処にも行かねぇよ。あんたを一人になんかさせない。」
「…もう一度だけ、」

君を信じてみると風介はふんわりと笑った。