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敵だったんだぜ?

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…やっちまったよ。

俺はたった今漫画などでよくあるべたな過ちを犯してしまった。
そう、入学式早々寝坊をしたのだ。
高校に行くには電車やらバスやら乗り継いで行かなければならないので中学生の時より少し早起きをせねばならないのだ。
眠たい目をごしごしと擦り制服に着替える。
うとうとと首をかっくんかっくん揺らしながらリビングに降りるとすぱーんと薄い冊子を丸めたので叩かれた。

「いって!何すんだよ!」
「何って、君ねぇ寝坊したんだからもうちょっと焦りなよ。」
「だってまだ時間あるし。」

今俺を叩いたのは基山ヒロト。
エイリア学園が無くなってなんやかんやあって同居するはめになった内の一人だ。

すると奥から叫び声が聞こえた。
相変わらず五月蝿いな朝から。
こいつ等去年と些か変わってなくね?
と思う自分も変わっていないような気もするのだが、敢えて気にしない事にした。

「何で俺のネクタイが消えてるの!?」「いや、此処にあるから。」

走り回るリュウジに対し呆れ顔で落ち着きながらヒロトは机上にあるネクタイを指で摘む。
どうもと笑ってそれを受け取る彼は緑川リュウジ。
彼とヒロトと俺の三人であの時から暮らしている。
この三人だったら二人足りなくないかと思った皆様、ご名答。
二人いないのだ。
このメンバーには二人足りないのだ。
しかし、その二人は瞳子姉さんの指示により別の所に住まわされたのだ。
流石に一つ屋根の下、かつてのキャプテンを全員揃えるのがあれだったのだろう。
その二人が住んでいる場所なんて知らない。
瞳子姉さんに聞いても教えてくれないし、彼等は俺達と別の中学校に通ったものだから当然会う機会もなく。
俺達の糸は途切れてしまったのだ。

意外にあっさり切れたと自分でも思った。
あんなにいがみ合ってたり見下してたりしても切れる時は切れるんだと思った。
心にぽっかり穴が空いたとでも表現するべきか、俺はなんともいえない心境だった。

パンを口にくわえながらテレビのニュースを見ると就活の事についてやっていた。
高校も中学の時みたいにあんな高速で終わったらあっという間に就活しなければならない年齢になるな。
大学なんざ行く気はねぇからな。

「今氷河期だもんね就活。」
「俺は大学行って諺でも学ぼうかな。」
「晴矢はどうするの?」
「…フリーターでいいや。」

するとリュウジとヒロトがきょとんとしてくすくす笑いはじめた。
それを気にもとめず俺は鞄を持って家を出た。
これから通う高校は結構偏差値が高いところだ。
理由は大学に行かないで働くのならかなり良いとこ行かないと食っていけないだろうという考えからであった。
電車ががたんごとん揺れて俺も高校生になったんだなと改めて再認識する。
電車を降りてバスに乗ると同じ制服の人をちらほら見かけた。

地図を見ながら学校まで行くとそこには如何にも真面目という生徒が大勢いた。
俺はそんな中浮いているなと思い早々と体育館に向かった。
体育館に入るといきなり人とぶつかった。

「すいません。」
「いや、こちらこそ。」

顔を上げるとぶつかった人の顔に見覚えがあった。
頭を抱えて相手もゆっくりと頭を上げた。
目が合った。
彼は俺に気付いたのか否かその場を立ち去ろうとしたので咄嗟に腕を掴む。

「あ、はは。」
「よぉ。」
「久しぶり。」
「何で此処にいるんだ。」
「貴様こそ。」

互いの制服を見ると同じ制服だったのでこいつも此処の高校なのかと思った。

ぷつんと切れた筈の糸が再構築された。
まさかこんなところで会えるなんて。
二年ぶりなのに何十年も会ってないような気がした。
涼野は顔が大人びていて背も伸びてすらりとしていた。
その容姿じゃさぞかしモテるんだろうな。

「背も高くなった。顔も変わった。でも性格は相変わらずみたいだな。」
「会いたかった。」

口が勝手にそう言っていた。
涼野は、唖然としていた。
そりゃそうだ。
ガゼルとバーンは互いが大嫌いだったのだ。
別れる時も睨み合いながら別れた。

「今日私の家に来るか?治いないし。」
「行く。」

涼野はふと薄く笑った。
なんだか顔に熱が貯まるのが分かった。

「じゃ、私は理数科だから。校門前で待ってて。」

涼野はすたすたと去っていった。
あんたは理数科かよ。
更に偏差値高いじゃねぇか流石だな。
それにしても何で俺が理数科じゃないの分かったんだ?
いや、俺は典型的な文系だから聞かなくても分かるんだろうけどそこら辺はやっぱりむかつく。

入学式も終わり担任の話も終わったので、帰る準備をした。

「南雲…?」

そう声を掛けられたので振り返ると見慣れた女の顔。
女は俺を見ると赤面して、久しぶりだねと笑った。

「蓮池もこの高校なのか。」
「"も"?」
「や、何でもねぇ。」
「あのさ、この後時間ある?」

蓮池はもじもじしながら言った。

「ごめん、用事あるんだわ。」
「そっか。じゃあね。」

蓮池はぱたぱたと走り去って行った。
涼野の家に行くんだとは敢えて言わなかった。
かつての敵と何してるんだと思われたら嫌だったからだ。

いつの間にかぽっかりと空いた穴が埋まりかけていた。
まだ完全にではないけど。
校門で立っていると涼野が歩いてきた。

「遅れてすまない。」
「にしては歩いてきたよな?」
「まぁまぁ。どうする?一旦帰る?」
「いや、そのまま行く。」

そうと彼は歩き出した。
2、3歩歩いて、歩き出さない俺に気付いたのかぴたと止まった。
そして振り返ってきょとんとした顔で俺を見つめた。

「来ないのか?」
「…あんたさぁ…。」
「何。」
「俺をどう思ってる訳?いきなり家に来るだなんて敵だったんだぜ?」
「なら来なきゃいいじゃないか。貴様こそ私をどう思ってるんだ。」

いつも私を置いていったくせにと彼は呟いた。

俺は何をしているんだろう。
何を今更たかが涼野ごときに会ったくらいで浮かれているのだろう。
大嫌いな奴に会って何でこんな嬉しいんだろう。
何で今更、今更。
涼野は相変わらず何を考えてるのか分かんねぇし、ムカつく野郎なのに、何で。

「私は君の事、嫌いじゃなかったよ…?」
「…は?」
「まぁネオ・ジェネシス計画発動以降だが。」
「マジかよ。」
「…で、どうすんの?」
「…行く。」

少し前にいる涼野の横に並んで一緒に歩いた。

埋まりかけていた穴が完全に埋まった、そんな気がした。

あんただろ?
あんたが俺に穴を空けたんだろ?

そう横にいる彼に目で訴えてみた。
それに気付いたのか彼は俺の顔をがっと掴んでコンクリートの壁に突き付けた。

やっぱり嫌いだこんな奴。
ムカつく野郎だな。
あんたの部屋荒らしてやる。

こんな彼との他愛のない生活を望んでいたのかもしれない。
作品名:敵だったんだぜ? 作家名:りるら