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暫定設定で月島六臂を書いてみた。

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(次の曲がり角を……右、だな)
 ゆったりと歩みを進める余裕が在るのは、今自分が見つけるべき人間が立ち止まっている気配があるからだ。悔しいことに身長差のせいで目標の人物と自分は歩幅が違う。そのため同じペースで歩かれてしまうとこちらは追いつくために急がねばならないが、向こうが動かないのなら問題ない。
 人通りの少ない道のアスファルトを踏みしめる。平日の昼下がり、街中は幾分歩きやすい。学生や主婦の姿が見えるだけの道を、六臂は溜息を吐いて進む。気配はまだ動かない。
(迷子に動かれるのが、一番面倒だからな)
 自分の中で囁く感覚に従い曲がり角を右に進めば、ひらり、と視界の端に白いものがはためく。どうやら今回も自分の中のレーダーは正確だったようだ。六臂がずっと追っていた気配が、目の前に現れた。
 顔を上げれば、そこには目印の白いマフラーが、風に靡いている。
「月島、」
 声を掛ければ、バッと音でもしそうな勢いで振り返られた。この光景を見るのはもう何回目になるだろう。彼が自分たちの前に現れてから繰り返されるようになったこのやり取りに、六臂はすっかり慣れてしまっていた。
「帰るよ」
 だから、思わず手を差し伸べてしまうのも、これはもう癖なのだと、六臂は自分に言い訳をする。
 月島は子供ではない。庇護する対象ではない。力だって喧嘩だって六臂より強い。精神だって、他の静雄ベースたちに比べれば頼りないが、それでもきちんと自分の意志と信念を持った強いこころがある。
 それでもこうして、六臂が甘やかすように月島に接してしまうのは。
(嬉しいのかね、こうやって特別な存在になれるのが)
 差し出した六臂の手は、ぎゅ、と六臂より一回り大きな掌に包み込まれる。あたたかなその感触にその繋がった手を見詰め、もう一度視線を上げれば、月島は笑っていた。六臂を見て、情けない自分を責めるように眉を八の時にしながらも、笑う。
 帰る場所への手がかりが得られたことに安心して笑うのとは少し違う。まるで六臂が帰る場所で在るかのように、六臂が現れたことが家にたどり着けたのと同義であるというように、飾らない素の笑顔で六臂を見るのだ。
「うん、帰ろう」
 月島の声は弾んでいる。六臂は下を向いて仕方ないなと小さく笑う。
 握られた手が離れないのは、二人の意志で、二人の道だからだ。