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ここはどこで、いまはなんじで、どうしてこんなことに

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目を開けると見慣れない天井だった。ここはどこだ、という疑問もあったが今は何時だ、というそれが勝って常日頃は時計代わりにもなっている携帯電話を手で探す。普段なら枕元に置いてありすぐに見つかる筈のそれがいつまで経っても見当たらないので仕方なしに起き上がれば、何故か服を着ていなかった。服を脱いだまま就寝するような習慣はなかった筈で、もしや、と思い恐る恐る下を覗けば履いていなかった。服は全て布団、もとい寝台の下や床に落ちていて、明らかに1人分ではない。一瞬凍りつき、何事だと布団の中へ退却する。

 見知らぬ部屋で、全裸で、誰かと一晩過ごしました。まったく記憶にありません。
=なにそれ非日常。

 そんな現実逃避をしてる場合ではない。
――落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け
そこまで繰り返している時点で彼は落ち着いていない。そしてそんな彼の精神状態を無視するように
「何よ、うるさいわね」
ごそり、と隣で動く気配がした。混乱しつつも状況確認のために布団から顔を出しそちらを見やれば同じく全裸の矢霧波江がいる。布団から上体を起こし髪を掻き上げ、随分と魅力的な肢体を惜し気もなく晒す彼女を見て
「ギャアアアアアアアアアア!?」
竜ヶ峰帝人は悲鳴を上げた。

 波江とは敵対しても同衾するような関係ではない。それが何故こんなことになっているのか思い出そうとしても混乱している頭では思うようにはいかず、それより先に波江と目が合ってそれどころではなくなった。

 殺される。

 初対面、というより初めて対峙した時、恐らく波江は帝人を殺すか消すかするつもりでいた筈だ。あの時は数に頼って切り抜けたが今の帝人には何もない。ついでに逃げ切る俊足もない、あったとしても全裸で外へ出る非常識さを持ち合わせていない。走馬灯が浮かんでくることすらなく、ただただ蛇に睨まれた蛙の如く、震えることも出来ずに波江を見返していた。
 波江は眉を寄せている。それはそうだろう。同衾した相手は彼女が全身全霊をかけて溺愛している弟ではなく、以前に敗走を余儀なくされ辛酸を舐めさせられた憎むべき敵。この場で帝人の首を絞めてもおかしくはない、寧ろ自然な流れだ。しかし波江は舌打ちをしただけでさっさと寝台を下りると床に散らばった服を拾い始める。豊かな胸、細い腰、程良く肉のついた脚。自信があるからかそれとも弟以外の男など眼中にないないからか(確実に後者だろう)隠そうともしない。耐性のない帝人が短く叫んで再び布団へ潜ると、ハ、と嘲うような声すらした。泣いても良いだろうかと敷布を握ると
「さっさと仕度しなさい」
布団ごと剥がれた。





 外は明るく、その時間帯にこんな店のある場所だからか人は少ない。ところどころに白い雲が浮かんでいた。こんな状況でなければ、と思わずにいられない。
「……矢霧さん」
「何かしら」
「ホテル代、出した方が良いですか?」
「ボロ住まいで1人暮らしの高校生に期待する金銭なんてないわ。そんなことより、竜ヶ峰」
「何でしょう」
隣には和やかな晴天を裏切るような冷たい美貌。今度こそ死ぬかも知れない。
「貴方、誠二とは仲良いのかしら?」
「まあ、会話する程度には、悪くないと思います」
「そう」
カツ、と踵を鳴らして波江は歩き出す。

「命拾いしたわね」

そのまま去る背中を見送って、助かった、と重苦しい息を吐き出した。