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ぐらにる 流れ 食事

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何もなければ会いましょう、という手紙が、自宅に届いていた。相手の素性は、よくわからない。というか、考えないことにしている。どう考えても、ブラックマーケットの関係者としか思えないからだ。

 待ち合わせの場所は、自宅の近くの自然史博物館。

 待ち合わせの時間は、正午から閉館まで。

 いくらなんでも、長過ぎるだろうと呆れつつ、そこへ出向いた。本当に会えるのか、かなり疑問だったが、博物館へ入って、時間潰しにギャラリーに足を向けた。そこなら、何時間かの待ち時間も、苦にならない書籍がある。しかし、そこには先客がいた。

「姫。」

 大きな画集のようなものを眺めている彼は、まぎれもなく、自分の「眠り姫」で、とても穏やかな顔で、それを眺めていた。

「よおう、早かったな。」

「きみこそ、いつから? 」

「うーん、午前中に着いたんだ。」

「それなら、自宅に来ればいいだろうに。」

「いや、たまにはさ。待ち合わせっていうのもいいかと思ったんだよ。」

 所在地不明の人間なので、会いに来る時は、いつも、先に手紙が舞い込む。こちらから連絡ができないから、仕事で留守になっていることもあるが、そういう時は、何かしら、彼が居た証拠はあった。例えば、忙しくて片付けていなかった部屋が綺麗になっていたり、冷凍庫に保存食が冷凍されていたり、する。ただし、メモの類は一切ない。顔を合わせられたら、ふたりして、飽きるまで抱き合って、貪るように、どちらの身体も堪能する。だから、あまり会話らしい会話というのがない。

「食事は? 」

「あんたは? 」

「まだだ。とりあえず、姫を探して、見つけられなかったら、ここのカフェで軽いものでも摘もうと思っていた。」

「なら、俺と一緒だな。・・・・じゃあ、どこかで食事だ。」

「その画集を読み終わるまで待つ。」

「いや、いいんだ。」

 ギャラリーの一角にある棚に、それを丁寧に直すと、彼は立ち上がる。自然史博物館は、人間が発生する前の時代のものが多い。彼が眺めていたのは、白亜紀辺りのイメージ画集だ。

 以前、彼は、「人間なんていなきゃいいのに。」 と、ぼやいていたことがある。多くの人間で構成される世界というのは、争いが絶えない。私は、軍人として、その戦いに参加しているし、彼は、別の方法で、それを補助している。

「人間が、例えば、二人だったら、きみの理想とする世界になるだろうな。」

 博物館を出て、ぶらぶらと歩いていた時に、そう言ったら、彼は大笑いした。

「けどな、そのふたりでも喧嘩はするぜ? 」

「なるほど。確かに、そうだ。」

「なくならないんだろうな。けど、まあ、あんたが、俺の手紙に反応できるってことは、それなりに平和なんだろうよ。」

「姫の来訪なら、何が何でも休暇をもぎ取るのは、私の義務だ。」

「・・・・まあな・・・・」

「どのくらい滞在できるんだ? 姫。」

「長くて一週間。」

「ふむ、それなら、少しゆっくりと、きみと話せそうだ。」

「そうかな? グラハム。俺は、今、猛烈に欲情してるんだがな? 」

「はあ? 姫、そういうあからさまな言動は慎みたまえ。姫には相応しくない。・・・できれば、今日は一日、デートするというのはどうだろうか? 」

 滅多に会えない相手だからこそ、身体を繋いで確認したい。だが、一週間の猶予があるなら、少しでも姫との会話を楽しみたいというのも正直な気持ちだ。

「デート? ・・・・俺とかよ? ここは、あんたのお膝元だぞ? 知り合いに見られたら言い訳が大変だろう。」

「別に、私の最愛の姫だと紹介するさ。なんなら、今から、友人に紹介してもいい。」

 私の言葉に、姫は、へ? という口で立ち止まった。

「私は、別に隠しているつもりはないぞ。今日だって、『デート』だと、友人に言って来た。」

「え、いや、グラハム? 」

「もちろん、私の姫は男性だが、素晴らしく美しいと惚気ても来た。どれほど、きみが私の理想であるか、いつも語ってもいるさ。友人も、手放しで賞賛しているぞ? 姫。」

 私の言葉に、彼は耳まで真っ赤にして、それから、私の腕を掴んで歩き出した。ずんずんと歩いていると、私の自宅へと向っているらしいと気付いて、足を止めた。

「待ってくれ、姫。まずは食事だ。」

「食わせてやるよっっ。」

「いや、生憎、私の家には食料が・・・・」

「だから、俺を食わせてやるっっ。・・・・ここで、あんたの知り合いと鉢合わせなんてしたくねぇーよっっ。こっぱずかしくて死んじまう。」

「いや、空腹を満たしてからのほうがいい。」

「デリバリーでもとれ。だいたい、なんで、そんなこと、ズバズバ人に言うんだよっっ。人が、せっかく、あんたのことを心配してやってるっていうーのにっっ。」

 たぶん、私の姫は、姫なりに、私のことを心配しているのだろう。自分の素性が怪しいことで、私のほうが問題になってはいけないと思っているらしい。なんていうか、とても可愛いことを考える。

「私は、きみが、何者であろうと気にしないと言ったはずだ。きみのことで、私に不利になるというなら、私の力不足ということだ。それは、私の問題で、きみの所為ではない。・・・・姫、たまには、外で食事しよう。私だって、私の姫を見せびらかしたいという欲望を募らせているんだよ? 」

「・・・バカ・・・・」

 私の言葉に、彼は立ち止まった。今度は、私が彼の腕を掴んで、別の方向へ足を進める。

作品名:ぐらにる 流れ 食事 作家名:篠義