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悪いのはきみだから

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あつい。
デンジは部屋のクーラーのリモコンを握りしめながら、同じ単語を繰り返した。脳内がその言葉で埋め尽くされる感覚に陥り、リモコンを押す。
びょお、と涼しい風が顔に直接当たる。隣に座っていたライチュウが、何か物言いたげにデンジを睨みつけて風の当たらないところへ行ってしまった。
なついているライチュウがこんな反応をするのは珍しく、デンジは首を傾げる。
「ライチュウ?」
声をかけるものの、じ、と見ているのはデンジではなくクーラーで。デンジはあつかったのだが、寒かったのかも知れない。
ごめん、でも俺はあつくてたまらないんだ。デンジが口を開こうとすると、ライチュウがいるちょうど真上にかけられていたカレンダーに目がいく。
クーラーをつけるような月ではない。むしろ、暖房器具のスイッチをオンにするのが普通である。
「ああ……」
そうか、とデンジは思う。今日は久しぶりにオーバのバトルを見て、あつくなったのだ。真冬にクーラーを付けてしまうくらいに。
「ごめんな、ライチュウ」
「らいらー」
寒いのか、すりすりデンジの太ももに寄ってくるライチュウの頬袋がくすぐったい。最初は頭を撫でていたのだが。
「……っ」
勿論ライチュウに下心があるはずはない。好意だけを持って擦り寄ってきた自分のポケモンの動きに、デンジは感じてしまっていた。
デンジはもう一度ライチュウの頭を撫でてから、ボールに戻す。
「……っく…」
何をしているんだ、と自分でも思うがこの疼きを鎮めることが出来ない。
あんな熱いバトルを目の前で見てなお、無力でいられる程デンジは腐っていなかったようだ。何故あそこに立っているのが自分で無かったのかとすら思った程である――尤も、デンジを熱くさせた一人である少年とは明日バトルをするのだけれど。
しかし、この熱をどうにかしてくれるのはただ一人しかいない。あつい身体を抑えるために、デンジは自分の身体を抱きしめながらある男の元へ向かった。


「オーバ」
今日はお疲れさま、ゴウカザル。と呟きながらポフィンを与えていたオーバの耳に、死にそうなくらい小さな声が届いたのはもう夜半過ぎだ。
声は聞き覚えがありすぎるものだったが、時間が時間である。
男の名前を呼びつつそっとドアを開けた。
「オーバ……」
熱っぽい表情を浮かべながら自分の名前を呼ぶ男に、オーバはなるほど、と思う。
「久しぶりじゃないか?デンジがそういうことで俺のところに来るなんて、な」
恐らく自分は物凄い性悪な笑みを浮かべていることだろう。だが、最近はデンジが腐っていたこともあり“そういうこと”は全然無かったのだが。
久しぶりにあつくなったのだろう、それが直接下半身にくるなんて彼もまだまだ若いということだ。
「何、俺とサトシくんのバトルで興奮した?」
それは疑問の形を持ってはいたが、ほぼ確信に近い。幼い頃から共に居たのだ、それくらいは分かる。
「……」
何も言わないのは、肯定を意味していた。分かっているよ、と言って優しく抱きしめるのは自分らしくない。
「何も言わないと分からないだろう?」
分かっているのに敢えてそうするのが、オレだよなとオーバはにやにや笑い、思う。
「ああ……」
デンジという男は普段は寡黙な人間だ。それゆえ、熱の放出の仕方が分からないのだろう。やれやれ、と仕方なさそうに肩をすくめる。
我ながらずるい男だと思う、そうやってデンジに“仕方なく”付き合うふりをするのだから。
「オーバ」
デンジの筋張った、しかししなやかな指がするするとオーバの身体を辿る。横腹から胸板へと、辿る指の動きは明らかに意思を持っていた。
「なあ……」
潤んだ瞳は、最近見慣れたやる気のない死んだ魚のような瞳ではない。
「とてつもなくあついんだ……俺の、鎮めてくれないか」
オーバの腕を掴んだかと思うと、デンジはそれを自分のズボンの上に導く。
言い方は、バトルのときのそれと同じで。二言目には俺のエレキブルを鍛えてくれと言いそうなくらい。
だが、それとは違うことをオーバは分かっていた。
ベルトのボールにゴウカザルを戻す。男の動きに迷いは無かった。
「仕方ないな」




作品名:悪いのはきみだから 作家名:ひらめ