人魚のなみだ
見るつもりはなかった、ただ教科書を忘れたから取りに戻ったんだ
たったそれだけのことだった
それだけなのに、俺の心は真っ白だった
「っ、は、はぁ…はぁ、はっ」
そこで笑って「おーお前らこんなとこでなにやってんだよー」とか「あついねー!」とか茶化せばよかったのに
できなかった、俺はレッドが好きだから
「はっ、う…ふ、う、はぁ…」
別に告白しようとか思ってない
しようとも思わなくて、きっと一生言わないし
この思いはおしつけたら迷惑だし、レッドのそばにいられることができるのならそれでいいと思った
「好きです」なんて言って気味悪がられてそばにいれないことのほうがつらい
結局、臆病で弱いだけだとか自分が一番知ってる
学年成績トップ、生徒会会長、部活での成績…
全部、全部自分の弱さを隠す仮面なんだ、本当は、弱い
「うっ、ふっ、くっ…ふぅ、っ」
だから、コトネにキスしてるのを見たとき何も考えられなくなって走った
今どこにいるのかもわからない
とにかく走って、泣いた
考えると最近レッドは俺とあまり行動しなくなった。
部活が終わると一緒に帰ったり、朝も一緒に登校したり、ご飯たべたり、休み時間ふざけたりしてたのに
最近は一緒ではない
先に帰ったり、朝寝起き悪いのに俺より早く登校してたり、ご飯も後輩のゴールド達と食べてたり、休み時間も教室にはいなかった
「うう、うぁ…ふっ、」
あまり深く考えてはいなかったがこう思うとやっぱりおかしい
今更、俺の気持ちがバレたのか?
ただ嫌われただけ?鬱陶しかった?
ちがう、レッドはコトネが好きだったんだ…、俺との時間じゃなくコトネとの時間を優先したんだ
あたりまえだ、好き同士だし、時間は大切にしたいだろう
だから、最近俺と一緒にいないんだ…
考えたらまた泣けてきた
もうよくわかんねえ
「う、あ、れ、レッ…ひくっ、ド、ふっ、く、ぅふっ、…」
もう終わりだ、明日からたぶんコトネを見れないし、レッドも見れないどうしよう
無理だ、やっぱ気持ち隠すとか
「は!、はっ、こっ、こに…っは、い、いたの、はっ、」
「…レッド!?、うっ、ひっ」
「ふぅ、探したよ、はあ、いきなり走ってくんだから…」
「…」
「…っ、ふっ」
「ねえ、なんで泣いてるのさ」
「!ぁ、な、なんでもねーよ…、ひくっ」
「なんでもないやつが教室から急に走っていくわけないじゃん、しかも泣いてるし…」
「こ、これはっ!」
「…ねえ、どうしたの?」
「……、お前、コトネとキスしてた、ろ…」
「は?」
「…さっき、教室で、俺、教科書忘れたから取りに戻ったんだ…、そしたらお前とコトネがいて、キス…、してて、ふっ、うう、ひっ、く、うあ」
「ああ、そのこと…」
「!(やっぱキスしてたんだ…、ダメだ、涙、とまらない)」
「…、はあ、何を勘違いしてたんだかわかんないけど、コトネは俺の髪のゴミとってただけだと思うよ」
「は、え?」
「糸くずついててとってもらったんだ、それだけだよ」
「で、も、教室で、…ひっ、く、二人だったし…」
「あれはコトネの相談にのってたんだ、グリーン、君の事だよ」
「え?」
「コトネ、君の事が好きなんだって」
「は?」
涙がふっとんだ、なんだそれ、聞いてない
「さっき、それで相談受けてたんだ、それで教室にいたの」
「えっ、」
「わかった?」
「わ、かったけど、最近俺と一緒に帰ってくんないし、嫌われたかと…」
「はぁ…、違うよ」
「じゃあ、なんで…」
「最近グリーンよくゴールドと一緒にいたでしょ…」
「ああ、それが…」
「それが気に食わなかったんだ」
「え」
「最初僕もよくわかんなくて、でもゴールドと一緒に歩いてる君みるとすごくイライラして先に帰ったり、一人でご飯食べたり、苦手な早起きしてまで君に逢いたくなかった」
「…」
「それが『嫉妬』だってわかったのはほんと最近だよ…」
「え、え?」
「正直、君みたいな強がりで泣き虫で弱いのは好きじゃないし、幼馴染だしうるさいし、でも腐れ縁だと思って一緒にいた、『はず』だったのにね」
「…」
「気づいたら、嫉妬するくらい好きになってたんだよ…、ね」
「っ!」
「気持ち悪いとか思ってたらごめん、さっきコトネの相談のってる時もイライラしてたしきっとコトネにはきつい口調だったと思う、ほんと自分が醜いよ、君の名前が出ただけで動揺するんだ」
「あ、」
「僕も、ダメだよね…、ってなんで泣くの」
「ふっ、うっ、だ、って」
「…」
「おれ、レッドに、ふっ、嫌われたかと思って、っく、たから…」
「…」
「レッド、はっ、ふ、お、おれも、す、すきだ」
「!」
「ずっと、ふっ、好きで、うぁ、でも、おれもっ、めいわくに、っく、なるかとおも、って、言えなくて…」
「…」
「こ、告白して、この関係がっ、く、ずれるの、やだった、から…、胸に、しまっておこうと思って、たんだ」
「…」
「でも、レッドがそんなこと、ふっ、ぅ、い、言うからぁ、お、おれ、わかんなくなって」
「っ、グリーン!!」
「!!!????」
「ごめん、抱きしめたりして、嫌だった?」
「え、あ、や、じゃない、ふっ、ん、く…」
「じゃあ、このまま聞いて」
「…」
「僕は、グリーンが好きだ」
「、」
「グリーンは?僕のこと好き?」
「あ、さっき、言ったろ、ひぐっ、」
「もう一回行ってよ」
「う、あ」
「ねえ、ほら」
「ううう…」
「じゃあ、グリーンは僕の事嫌いなの?」
「ちっ、が!」
「じゃあ、好き?」
「う、ぁ、す、好きです」
「はは!」
「?」
「やっぱ君追いかけて正解だった、好きだよ、グリーン」
「…、な、何回も言うなよ!!は、恥ずかしいだろ!!!」
「涙、とまったね」
「あ、」
「よかった、じゃあ、キスしていい?」
「はあ?おまっ、ばかじゃねーの!、離れろって!!!」
「ねえ、いいでしょ?」
「は?やだよ!!なにを、ギャー!どこ、触って!」
「グリーン、やっぱ僕のこと、好きじゃないんだ」
「〜っ、ちっげえよ!あーもー、」
「じゃあ、キスしていいよね」
「そういう問題じゃなくてっ!顔!!ちけえ!!!」
「もううるさいな、黙ってよ…」
「っ、やめ、ろってば!」
俺は自分が弱くて臆病な人間だって知ってる
告白もできないそんな奴なんだ
…でも、俺の幼馴染も似たようなもんだったらしい
結局、俺とレッドは付き合うことにした
コトネには悪いけど、俺はいま幸せだ