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夜行、三分間

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 月の明るい晩のことだった。銀時は気付く。
 うねる銀髪を夜風に揺らして歩きながら、唐突に指を三本、ずいと出した。
「三分間」
 並ぶ桂はハア、と溜め息。加えてじっとり湿気た眼差しをそれへ向ける。長年付き合いがあれども未だに坂田銀時という男を理解できずにいるのであった。
 これを知ってか知らずか……否、確実に知らぬ様子で銀時は構わず続ける。
「三分、三分間だ」
「三分がどうした」
「三分間で錆付く。感情も、何もかも」
 一瞬の間をおいて再び落とした溜め息と共に銀時も道へ捨て置く桂は、銀時を理解するのをすっかりさっぱり諦めたようだった。早足で歩き去ろうとするものだから、ひっそりした通りに草履の擦れる音が大きく響き渡る。
「ちょ、ま、ヅラ! ヅラの人! そこのヅラの人! お待ちになって!」
 銀時は大慌てで追いかける、追いかける。
「ねーえヅラってば! 聞いてってゆーか聞けゴルァヅラァ」
 常人では有り得ない程度にまで速度を増した早足で夜道を往く桂へ追いつき、言ってその肩をむんずと掴んだ瞬間。
 銀時は、星を見た。
「えっ、痛――」
「痛いのは手前ェの方だろうが自覚ナシか重症クルクルパーマネントォォ!」
 激昂した桂による見事な背負い投げが炸裂したのである。何故だ。銀時は不思議に思いながら星を見る。きらきら輝くその中には、ヒヨコも一羽、二羽、三羽。
「いやァ確かにクルクル頭だけどね、流石にヒヨコ飼ってる覚えはねーんだわ」
 星の瞬く牧場で十二羽目のヒヨコがピイチク可愛い産声をあげたとき、銀時のクルルン天然パーマネントヘアーが引っ掴まれて無理矢理に起こされる。彼の眼前には桂。
「……錆付くのか、何もかも」
 どうやら先刻銀時の言った事が気になるらしい。明かり一つない夜闇の中では、桂がどんな顔をして話をしているのかわからない。
「何もかも、というのは」
「そのままだ、何もかも」
 銀時は桂が唇を引き結ぶのを見逃さなかった。見逃せなかった、といったほうがいいのだろうか。
「……何もかもの中に俺も含まれているのか」
 結びの解かれた口から漏れる言葉はひどく弱々しげだった。大抵の人間はこんな様を目にすればたちまち不安がるだろうが、銀時に限ってはそんな事などなく、それどころか笑っている。長い付き合いの中で幾度も見た様なのだ、それを逐一気にかけるなんて事は銀時にはあまりに下らな過ぎた。
「バカだろ。お前バカだよとんでもなくバカだよ」
 馬鹿、と言えば桂が顔をしかめる。見えないけれどもその気配を感じ取って銀時は立ち上がりながら言う。
「錆びるのは人を斬った刃だけで十分だろが。知ってるクセに言わせんな。天パもヅラも錆びません。こんな長い事一緒に居て、サビサビになるのなんて俺は御免だ」
 桂の背を流れる長髪をひとつ撫ぜて、彼は再び夜を往く。
 きっかり三分間での出来事だった。



作品名:夜行、三分間 作家名:みしま