二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

I will live for you.

INDEX|1ページ/1ページ|

 
まだ風は冷たく,薄暗い。

「またいつもの場所か…。」

宿舎の前,ひと気のない道には、寂しげな足跡がついているように見えた。

マークはゆっくりと歩き出す。


遠くから見続けていた情けない自分を捨てるために。



   □■□■□



「…見つけた。」

サッカーボールの前に立つ少年は,その声に驚いたように振り返った。

「マーク―――…。」


「朝から練習か? カズヤらしいな。」

フェンスにもたれかかる背中を,一之瀬は静かに見つめる。

そして小さく息を呑むと,笑った。

「ああ。マークこそ,何でこんな早くに?」

沈黙をごまかすように,風が微かに音を立てる。

「たまたま目が覚めて眠れなくなった,そんなところだ。」

あたりの空気に似つかわしくない,他愛もない会話。

それもここまでだというように,一之瀬が笑みを消す。

「俺に…何か用?練習中,なんだけど。」

マークはそれも気にしていない様子で,振り返りもせずに返した。

「何か,知られたくないことでもあるみたいだな。」

質問の答えにはなっていないが,その言葉は核心をついていたようだ。

一之瀬の表情が凍りつく。

「ここ最近,様子がおかしいとは思っていたが…。何かあったのか? 」

気遣ったらしいマークの問いかけに,上手く抑揚のつけられていない声が返された。

「別に…そんなんじゃ,ないんだ。ちょっと色々,考えることがあって…。

っ…それにほら,次はイナズマジャパンとの試合だからさっ。」

空元気のような声を聞き終えると,マークはそっとため息をついた。

「そうか。無理はしないようにな。時間がきたら,また呼びに来る。」

結局お互い一度も目を合わせないまま,曖昧な会話は終わる。

離れていく足音に罪悪感を覚えながら,一之瀬は呟いた。

「      。」



   □■□■□



負けたくない…負けたくない…

「負けられないんだよ,絶対に! 最後の試合になるかもしれないんだ!! 」

弱気になりかけていた翼を,もう一度広げるために。

自分が燃え尽きるまで走り続けるために。

一之瀬一哉は,叫ぶ。

「だから…ごめん…。」

どうか,どうかどうかどうか。

――――俺の最初で最後の嘘を,許してください。

未だに頭から離れない後ろ姿。

溢れ出す涙が止まらなかった。


きっと後悔は,しないから。



   □■□■□



「…カズヤ。」

うずくまる小さな体が,そっと抱きしめられる。

「――どう,して…。」

震えた声が,怯えるように尋ねた。

マークは,一之瀬を抱きしめる腕に力を込める。

「約束を,しよう。俺が必ずカズヤを守る。だから…精一杯戦うんだ。

勝って,一緒に笑って欲しい。」

言い切れる根拠もない約束。

それでもきっと,届いたはずだ。




弱音を吐かない少年は,想いの込められた腕の中で,

声を上げて泣いた。



作品名:I will live for you. 作家名:あさぎ