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彼女のこと

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めぐみが政宗先輩と付き合い始めて数カ月が経つまで、めぐみは特定の男性とは付き合わないのだと思っていた。
それを決定的に打ちだせる理論など微塵も存在しなかったが、ただなんとなく、めぐみは一人に固執することをよしとしない人間であるように感じていたのだ。めぐみの双眸はいつだって輝きに満ちていた。
めぐみが楽しそうに男性と話している姿は、勿論さまざまな面で心配はさせられたにせよ、なかなかどうして、美しいと思わせる説得力があった。すべての人間がめぐみを好きになることを、私の脳はまるで自然に理解したらしい。

めぐみと仲良くすることによって、私自身、恨まれることも珍しい話しじゃない。
それを本人に伝えたことはなく、今後も伝える気はまったくないが、それなりに嫌がらせを受けていた時期も、ふと目を閉じたとき、隣にある。まあなんにせよ、それも確かにいい思い出だ。
今まで他人に傷つけられ慣れていなかった私の、それはもう脆弱なこころは、一度ぽっきりと折れぐしゃりとつぶれてしまったわけだけれど、自分でも驚くほど立ち直るのは早かったように思う。
自分の部屋でさんざん泣き喚いたあとに、全てを出し切った両眼はピタリと動くのをやめ、そのあとそっと、瞼を落とした。
カチ・カチ・と規則正しく流れる長針、の音楽。洗いたてのシーツのかおり。枕に耳をあてたときに聴こえる、血液の流れる音。たまに聴こえる、目の前の道路を、車が走る音だって、窓越しにはそっと届くものだった。

ふと、随分前のことを思い出す。
めぐみが「いらないから」と言って差し出したのは、昔から好んで使っていた香水だった。それを本人も愛用していることを、私は知っている。ご丁寧にラッピングまでされていて、まさかゴミだからと言って渡せるような代物でもないだろうに。ありがとう、と受け取った時、まるで照れ隠しのようにジュースを奢れと言われたことを、今でも忘れられない。
なにが起こっても、私はめぐみの味方であり、めぐみは私の味方であるということ。
凛とした空気のなかに、じんわりと広がる孤独と静寂が、唐突に全てを導き出した。思い出すのは二人で笑いあう場面ばかりで、先ほどまで嗚咽を漏らしていた口元は、そっと弧を描きはじめる。振り回されることなんて、いいわけない、はずなのに、なんて満ち足りた日々を映し出すんだろう。
強いひと、美しいひと、我がままに、しかし自身に対して半端や妥協を許さない双眸は、まっすぐに人を射ぬいてゆく。


知らないことは当然、たくさんあった。
友達といえど、口にしないこと、したくないこと、できないこと、そんなものは多種多様に存在していて、全てを理解しあうなんて夢想でしかない。ロマンチシズムは女の子なら誰もが持ちえるものであり、私もその類には事欠かないつもりでいるけれど、やっぱりどうして、その点だけは夢想であると知っていた。夢想、ということばを選ぶあたり、やはりロマンチシズムからは抜け出せないんだろうけれど。
決して並列化しないからこそ、コミットは生まれ、言葉は他者に投げかけるものとして成立する。めぐみと、私の間にある、隠しごとのひとつやふたつ、どうってことない。いずれ分かることもあれば、分からないまま時が経ち、いつかその秘密さえ意味をなくす時がやってくるのだ。めぐみが誰を好こうと、誰に好かれようと、めぐみが私の友人であり、たった一人の親友である事実は決して変わらない。
めぐみが世界で一番好きな人はめぐみ自身で、その後の順番はまだ知らない。
だから、だからこそ、少しは期待してみたい、好奇心がそこにはあった。

一番で有るのではなく、親友で在るのであって。
この違いを、彼女は理解してくれるかしら?
作品名:彼女のこと 作家名:knm/lily