ballad
【―ballad―】
鋼の――
エドワード――
必ず戻るんだ
君の帰る場所はここだ
何故戻ってこないんだ?
一体何をしている?
君が居ないと平和ボケしてしまう
いつものように反論したまえ
いつものように
いつものように笑ってくれ・・・
エドワード―――
ロイの眠る部屋に朝陽がさしこんだ
眩しさからか、それとも夢のせいなのか、
顔を歪ませながら目覚めたロイの睫毛は今日も濡れていた
あれから何日が経った?
ロイは自嘲的に笑った
エドワードが体を取り戻すための練成に行ったのは2年前
そして暫くして戻ってきたのはアルフォンスだけだった
目を覚ましたアルフォンスの周りにエドワードの姿は無かったという
そして、後日発見したエドワードの残した手紙には「ごめんな」と書かれていた
恐らくアルフォンスの体を戻すために手に入れた賢者の石の力の全てを使ったのだろう
そして結果を知りつつ足りない分は自分を犠牲にした
弟を何より大事にしていた彼らしい行動だ
エドワードが練成法を見つけ、故郷でやるからと旅立った日
ロイは嫌な予感がして仕方なかった
本当は「行くな」と言いたかった
だが穏やかに笑うエドワードを見て、
きっと求めてるであろう言葉を口にした
「行って来い」
「あぁ」と返事をしたエドワードは迷いが無かった
そしてロイは言葉を続ける
「必ず戻るんだ 君の帰る場所はここだ」
その言葉には、嬉しそうに…でもどこか悲しそうに微笑んでいた
ロイは窓を開け、空を見上げる
「君との思い出は全く色褪せないものだな」
ロイは青い空の中心の太陽を見つめながら呟く
エドワードと二人で過ごした日々を昨日のことのように思いながら
「だがもう・・・・・増えることはないんだな」
そしてロイは今日も真っ青な軍服に袖を通す
朝陽に「傍に居てくれと」言い
夕陽に「行かないでくれ」と言う
そして夜
夢の中でだけ
涙を流すことを許してくれ
end