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ラボ@ゆっくりのんびり
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アフタヌーンティ

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 無地のリネンのナプキン、美しい模様が描かれたティーカップ、銀色に輝く三段のプレートスタンド、その上の皿に置かれた一口サイズのサンドウィッチや色とりどりのお菓子。
 ティーカップから立ち上る湯気は木苺の繊細な匂いを発し、視覚だけでなく嗅覚までも楽しませる。そしてどこからか聞こえるピアノの演奏は聴覚までも満足させた。


(……これで、食いもんも美味かったら言うことなしなんだけどね)


 フランボワーズティーに口付けながらフランスは内心で溜息をついた。
 イギリスの家の紅茶の美味さは最高峰レベルだと、フランスはそう思っている。そしてイギリスの家の食べ物の不味さも最高峰レベルだと。
 どうしてこうも両極端なのだろうと毎度不思議に思う。紅茶の味がわかるならば味音痴ということはなかろうに、食事のレベルは低すぎる。一度彼が作ったスコーンを食してみたことがあったが、あまりの不味さに口に含んだ次の瞬間熱い紅茶で流し入れたものだから思いっきり舌と喉を火傷させたことがあった。それ以来、悪いとは思っているが彼の作るものに手をつけないと密かにフランスは決めていた。というのに毎度アフタヌーンティに同席するとき、彼は腕を揮ってサンドウィッチやお菓子を作っているのだ。
 老若男女問わず万物を愛せると自負するフランスにとって、そんな彼の努力を無下にすることなど出来るわけがなかった。
 目の前に座って優雅にカップを傾けているイギリスを見ながら彼に見つからないように息をつく。プレートスタンドの一番下にあるサンドウィッチを手に取り一口齧る。ああやっぱり、と決して上達しない彼の料理の腕を疎ましく思いながら咀嚼し嚥下する。少し温くなったフランボワーズティーで口の中を洗ったあと、差し入れとして持ってきたクレープ・シュゼットを食べる。食べ慣れた甘いデザートに心が落ち着いた。
 しかしプレートの上にはまだまだ食べるべきものが沢山ある。その全部をフランスが食べるわけではないが、せっかくイギリスがフランスのために腕を揮ったのだ。イギリスより食べる量が少ないというわけにはいかない。
 よし、と気合を入れる。その気持ちが萎える前にスコーンを手に取る瞬間、カップを傾けていたイギリスと目が合った。


「……あんだよ」

「いや? お前も食えよ。お兄さんが持ってきたクレープ・シュゼット、美味しいぜ」


 フランスの言葉を受けたあと、イギリスはクレープ・シュゼットの乗った皿を一瞥し、近くにあったフォークを手に取った。
 無言でフォークを刺し一口、また一口と食べ進めるイギリスを見て自然とフランスの頬が緩んだ。
 彼は決して素直ではないから「美味しい」と言ってはくれないだろうが、もくもくと食べ続けているその姿でわかる。気に入らないものならすぐに吐き捨てる彼だからこそわかることなのかもしれないが。
 その姿を愛しく思う。素直じゃないし可愛くもないけど、それでも。


(よし、頑張りますか)


 ジャムを付けたスコーンを口に運びながら、フランスは笑む。
 フランボワーズティーとイギリスの姿に免じて、今日はいつもより美味そうに食べてやろうと思った。