掌を太陽に
透き通った何処までも抜ける様な青空の下、舗装されていないでこぼこの道の真ん中に唯一人突っ立って、眩い光を放つ恒星に向けて掌を掲げる。
どくりどくりと脈打つ何か。
温かい血潮の裏側に見える冷えた罪悪。
目を逸らさぬ様力を込めて、そうして目を背けてはチリリと胸が焼ける音を聴く。
透かして、見た。
熱を持たない分厚い金属から見え隠れするものは何も無く。
けれども黒々と翳ったその掌に、隙間から覗く無機質な配線に、交錯する想いと人とを思い出してああ、と。
***
「兄さん」
呼ばれて振り返って、人知れず嘆いた。
感情の伴わない凍えた鋼鉄に身を包まれていては、幾ら陽に透かしたところで生きた証など見えはしない。
ぎり、と唇を噛み締めて、それでも熱が伝わる様にと生身の掌を差し出した。
見えるものなど何一つ無くとも、刻まれた記憶が何よりの証。
解っていても実感出来ない、体感する事の出来ないそれを憎んだ。
こんなにも晴れ渡っているのに、それでも冷え切っているその鎧の手を握り締めて、唯前を見て歩く。
天では無く地上を。
目線は常に先を見詰めて。
そうして一歩進んだ先には、温かな体温がある事を、唯唯ひたすらに信じて。
end.