鋼ログ
「ちわー。大佐居る?」
「あら、エドワード君。久し振り」
「よー、大将。それにアルフォンスも久し振り」
「こんにちは、少尉。皆も元気そうで何より」
「こんにちは、アルフォンス君。エドワード君は相変わらず派手にやってるみたいだね」
「曹長、何だその派手にやってるってのは」
「え?ああ、いや…はは」
「兄さん、本当の事だからってそう睨まないの」
「お前までそういう事言うか?!」
「まあまあ、その辺にして。エドは大佐に用があんだろ?あの人今会議中だから、悪ィけども少し待ってろよ」
「へぇ、あンのクソ大佐、ちゃんと真面目に仕事してる時もあるんだな」
「兄さん」
「何時もこうだと良いんだけど」
「中尉…」
「で、みんな集まって何してんだ?」
「ああ、秋といえば何の秋かっていう話をしてたんだよ」
「「秋といえば?」」
「ええ。お二人はどうですか?」
「僕は読書の秋かな」
「あは、アルフォンス君らしい答えだね。エドワード君は?」
「俺は俄然食欲の秋!」
「意外だな」
「ああ、お前じゃあるまいし」
「どういう意味だコラ。人がいつも何か食ってるみたいに」
「何、本当の事だろ?」
「テメェ…」
「ハボック少尉、ブレダ少尉。もう、二人とも止めなさい」
「皆はどうなんですか?」
「俺はスポーツの秋。読書なんてンな殊勝な事すると思うか?」
「あー…確かに。でもその方がハボック少尉らしいや」
「だろ?」
「じゃ、ブレダ少尉は?」
「俺は芸術の秋。とは云っても、自分で何かするんじゃなくて、何かを観に行く、って感じだな」
「絵画とか?」
「紅葉とかもな」
「へぇ、じゃ、ファルマン准尉やホークアイ中尉は?」
「私は食欲の秋ね」
「私は読書、ですな」
「中尉が食欲?!何で?」
「私の場合は食べるんじゃなくて、季節のものを使ったお菓子を作るのよ」
「成る程。でも何か意外」
「今度来た時にでも、事前に連絡くれれば用意しとくわよ?」
「ホント?!うわー、楽しみだなぁ」
「中尉の手料理なんて初めてだね、兄さん」
「ふふ、とびっきりのを作っておくわね」
「うーわ。羨ましいなぁ、お前ら。中尉のお手製なんて」
「はっはっはっ。悔しかったら、頼んでみたら?ま、どーしてもっていうなら、分けてあげない事もないけど?」
「兄さん…」
「ほんっとムカつく餓鬼だな、お前は」
「褒め言葉として受け取っとくよ。で、曹長は?」
「僕は特には…。強いて云うなら、芸術、かな」
「工作とか?」
「そんな感じだね。得意なものっていったら、それくらいだし」
「それでも凄いと思うけど」
「有難う、エドワード君。でも君が食欲の秋だなんて吃驚だなぁ」
「そ?だって美味しいもの沢山あるじゃん。この時期はさ」
「じゃあも一つ大将。冬といったら、大将にとってどんな冬だ?」
「食欲」
「冬もかよ!!」
「煩いなぁ、人の勝手だろ。育ち盛りなんだよ。育ち盛り!」
「…の割りには伸びてねぇよなぁ…」
「何か云った?!」
「イエ、何も…」
「あ、エドワード君。大佐、会議終わったみたいよ?」
「ほんとだ。じゃ、ちょっと行って来るから。お前はちょっと此処で待ってろよ」
「うん、了解」
「でも食欲ねぇ…。エドなら大佐と同じで読書とかいうもんだと…」
「あ、僕もそう思いました」
「私もよ」
「私もです」
「俺もだよ。アル、お前何か理由知ってるか?」
「あー…、知ってる…けど、内密にお願いしますね?」
「「「「勿論」」」」
「あの、兄さん牛乳嫌いでしょ?だから、その分一杯食べて栄養取って、身長を伸ばそうと頑張ってるんです」
「…牛乳飲んだ方が早くないか?」
「それが出来ればこんな苦労はしてませんよ」
「…だな。お前も大変だなぁ…」
「はぁ、もう慣れましたけどね。でも一向に伸びてないんですよね。横に伸びなきゃ良いけど」
「おま、それエドワードには言うなよ?」
「言いませんよ、流石に。でもあんだけ食べてて、どうやって消化してるんだか」
「そうなるとエド君は、年中食欲の、なのね」
「そうなるかなぁ。目標は大佐を超す事らしいですよ」
「……それって、」
「そういう事です」
「何、もしかして中てられた?」
「今更よ、少尉」
「やってらんねぇ。俺外回り行って来ます」
「あ!ズリィぞ、ブレダ!俺も行って来ます!」
「じゃあ僕は書類整理でも…」
「私も用があるので」
「…どうする?アルフォンス君」
「……僕もご一緒して良いですか?中尉」
「ええ、勿論。あの二人は勝手にやってる事でしょうし」
「犬も食わず、ですね」
「それにしてもエドワード君は健気ねぇ」
「そういうことに、しときます」
「年中食欲の秋だなんて、大佐が聞いたらどう反応するのかしらね」
「内密に、ですよ?」
「勿論。アルフォンス君を困らせるような事はしないわよ、私」
「ああ、でも本当に」
「「やってられない」」
end.