美しい喜劇
差し出された缶詰とペットボトルを受け取り、坂上は日野の顔を見上げる。穏やかで優しい、いつもの表情だった。この人は、どうだろう。語り部たちを、坂上を殺してでも、自分だけ生き残ろうとするだろうか。まさか。あるはずがない。彼は、坂上を好きだと言ったではないか。好きな相手を殺したりなどしないだろう。坂上をからかっているのではなく、本心から愛しているのならば──きっと……。
(何を考えてるんだ、僕は)
日野が本当に自分を好きであればいいと望んでいるんだろうか。そんなことは、あってはならないのに。