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お月さまが沈むまで（自由）

　その日は彼にとって、健康的な、実に充実した一日だった。折原臨也はすっかり眠る支度を整えた状態で、上機嫌に寝室のベッドに身体を投げ出した。
　珍しくスッキリとした朝の目覚めから始まり、なぜか彼の秘書の機嫌も良く、三度の食事は彼の好物ばかりがテーブルに並び、仕事はと言えばどれもこれもスムーズに運んだ上に相場の倍に近い報酬が手に入った。暇潰しにちょっかいをかけたネットの住民たちは面白いほどに思い通りの反応を示し、いくつかのブログはこんがりと炎上した。
　そんな諸条件が揃ったことで、こうして一日を終える今の今まで、彼は今日という日のことを近年稀に見る良い日と認識しているわけだ。あとは抜群の寝心地の良さを誇る布団に包まって眠るだけである。