二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

どうして世界は敗北の朝にも優しく巡るのか

INDEX|1ページ/1ページ|

 
みどりの森にたどり着き今年で7度目の春が来た。


メイやミィもそれぞれ身を固め子供を2人とも競うように生んで家族を作っている。

メイは駆け落ちした相手の狼とミィは俺と2人でその駆け落ちしたメイを連れ戻そうとヤギの群れから飛び出したが2人を捜す途中で、雪崩に巻き込まれて俺とはぐれてから、そのはぐれた先で出会った狼と結ばれて…と二人ともそれぞれ愛する相手をみつけ子供を生んだ。

メイが男の子を三人。ミィが男の子三人と女の子一人を生んでいる。どの子もどことなく2人に似てたり似てなかったりでとても可愛い子ばかり。子狼と子ヤギがいっしょになってきゃあきゃあいいながら抱いててもかましく落ち着き無く転がりお互いに楽しそうに笑い遊んでる様など他所ではとても想像もつかないところだ。

だが、それが許されるのがこの「みどりの森」だった。

幼い頃は今のような生活がまっていようとはおもってもいなかった。おれたちが皆あのなつかしいヤギの仲間と離れ、こんないろんな種族の動物と生活するなど想像すらつかなかったが現実いろんな種族と共存している。

俺は季節の中春が一番好きだった。若草の匂いや瑞々しい小川のせせらぎや匂いがにおうこの季節。全てのものがキラキラ暖かな日差しの中まどろむように肉食獣も草食獣も鳥も虫もそれぞれ支えあい生きている。それがこの森の姿だった。ここにはまず厳しい冬が長く続かない。冬はくるが、ひどい吹雪は本当にほんの一週間ほどで長い冬というものが存在しないのだ。あっても…ほんの3~4ヶ月ほどで終ってしまう。

一年の半分が冬だった…俺達の故郷とはあまりに違っていた。そのためか、ここにきたときにすでに住んでいた近所の夫婦の熊の旦那さんはよく春が来てても寝てたりして初めは寝ぼけてたよ…と笑って教えてくれた。

俺もとりあえず、現在、あの吹雪のひどい雪崩の後ミィとはぐれたときに出会った狼とともに暮している。その狼とは冷たい川の中で傷だらけの中倒れていたのを拾ったのがきっかけ。川一面真赤に血で染めてもう死んでるのでは…と始めは思った程だった。

狼は俺達ヤギにはあるいみ天敵だが…死にかけているのを見て見ぬ振りが出来なかった。

もちろん、その狼が気づいてからいろんなことがありはしたが、とりあえず、この緑の森にたどり着きメイやミィに会い、メイ達といる狼と俺が助けた狼が知り合いだったというのもあり、俺達もここに落ち着くことになったのだ。俺といっしょに暮している狼の名前はバリーという。いつもサングラスをかけているのは・・生まれつき目が光りに弱くて痛むからだといっていた。だから昼間より夜のほうが目がよく見えるらしい。たまに夜中に目が覚め起きてふっとみると暗闇の中腰かけて赤々としたルビーにも似た色の目でじっとこちらを見ていたり月や周りを見ている。そういう意味でも日中より夜間の方が調子がいいようだ。

一応、俺と彼は恋愛感情を絡めた関係でいっしょに暮している。

彼曰く俺の匂いがそのきっかけをつくったというが…俺にはそんなふうに言われてもよくわからない。というか、彼の口から「喰いたい」というのは何度か聞いても「好き」「愛している」という類の言葉を言われた事が一度しかないからだ。

言った本人も覚えているのか怪しいけれど。何しろ彼はあまりしゃべらない。

何か会話を振っても相槌しか打たないし、話しかけるのはいつも俺からだ。あまり意思の疎通が取れない上どこか自分や周りを褪めた目で見ているようだ。

一度、以前ミィの子供をあやしていたあそんでやった日の晩にベッドで「こどもが俺達もいたらどーなってたかな」とか冗談のように笑って聞いたら「子供なんていらない。」しばらく黙っていたかと思えばそれだけいい…そのあと乱暴に身体を重ねられたりした。何が彼の勘に触ったのか…俺はわからず、結局その晩は、いいように泣かされてかなり終わったあとは惨めな気持ちになった。

いくらぎゅうぎゅうと抱きしめられても、何だか、心がぽっかりとして穴が開いたように風が吹き抜けていく

俺は別に本当に子供が欲しいとか思っているわけじゃなくて…ただ「そうだな…」とか「バカ言うなよ」とか笑い飛ばすなりして肯定まではいかなくても少しは今の俺をどうおもってるとか、好きなのかなとか、そういうのがただ少し知りたかっただけだったんだ。

彼といると、時々だが、そういうのが見えなくて苦しくなる。

一緒にいるとなんとなくこう嬉しかったりするのに、そういうのが時々見えなくて不安になる。元から狼とヤギじゃ価値観も考え方も違うから。なにをしてもすれ違うんだと思うんだけど…。

春がくるととても心がうきうきして楽しいのに。

最近はだからただ楽しいだけじゃなくて、ちょっと泣きたくなったりする。


きっと昔ならこんな気持ちすら気づきもしなかったのだろうに。