Pavane
閉じ込めて出口をなくして
その目に己しか映さないようにさせることなど
至極、容易い
「私の目の届く範囲にいてくれないか」
だが現実は、こんなことをまるで懇願するように言うことしか叶わないのか
なんと己は歯痒い存在か
「それは、できない」
予想し得たその返答
ガラスの板を滑るかのようにその口調は平坦すぎて
湧き上がる苛立ちに紛れてその整った貌を力まかせに殴ってしまいたくなる
そうしたら君はその金の瞳を怒りに変えて私を睨みあげるだろう
それも悪くない
君の瞳に私だけが映るのなら
たとえ憎しみでも怒りでも
風のように生きる君の心臓に杭を打ち込むことができるのなら
それこそ本望だ
「大佐…っ、痛い」
「痛い?どこが?」
「手と…背中。こんな床で…やめろよ」
「なら振りほどいてみたまえよ」
「あんたが上に乗っかってるのに、できるわけないだろ」
「では、あきらめろ」
「…っあんた、最低だな」
「知っている」
「…」
「エドワード」
「…んっ」
「口を開けて」
「……っ た、いさ…」
こんなことをして、一時の快楽を得たとて
この渇えた心が癒されるわけも無く
こんな行為に意味は無い
たとえこの少年が受け入れても拒んでも
どうでも よかった
「どこへでも…」
「え…?」
「好きなところへ、行くがいいさ」
勝手にどこへでも行けば良い
私の支配の及ばぬところへ
「なあ、大佐」
そうしていつか私のところへ戻ってこなくても
どうでもいいこと
「俺の知らないところで 死ぬなよ」
「――」
何を言うかと思えば
そんなことは知るかと
答えてやっても良かった
ならば側にいろと
とりあえず言うこともできたが
「そうだな…お前が生きている限りは…」
ああ結局
どれだけ閉じ込めたいと欲しても
この存在に
捕らわれているのは
縛られてしまったのは
この愚かな己の方だった
「あ……たい、さ、ぁ…っ」
とりあえず今
すべて忘れて
この少年の華奢な首を絞めて殺して
二人で逝ってしまうのも
悪くないなと
ひとり嗤う
この金の檻の中で