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コンビニへ行こう! 後編

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だって帝人がこんなに嬉しそうに笑うというのならば、プリンの一つや二つ。そんな風に心のなかで臨也が決意を固めていると、帝人はおもむろに咳払いをした。
「さて、そろそろ場も和みましたね」
……どうやら、場を和まそうとしていたらしい。
場を和ます為に妙な臨也像を作らないで欲しい、切実に。
「臨也さん、なんでそんなに緊張しているんですか?もっと楽にしてくださいよ、僕まで変に緊張するじゃないですか」
「べ、別に緊張とか」
「雨、やまないですねー」
「そりゃ嵐だし、っていうか帝人君、なんでそんなに俺のこと見てるんですか……?」
「なんで敬語なんですか?」
「いや、あの、ね?」
じーっとまっすぐに臨也を見つめてくる帝人の瞳は、何か言いたいことがあるのだろうと容易に分かるくらいに雄弁である。なんだろう、場を和ませてまで、何を言いたがっているのだろうか。
「み、帝人君!」
「はい」
「あの、いっそ一思いに、言いたいことがあるなら言ってくれたほうが、俺も楽なんだけど!」
というか目をそらしてほしい。そんなに見られるとドキドキしすぎて心臓が爆発しそうだ。決死の覚悟で促した臨也の心意気を汲んでか、帝人も、そうですね、と一つ頷き、おもむろに。
「お願いがあるんです」
「お、お願い?」
帝人君が、俺に?
臨也は挙動不審に帝人と自分を交互に指差し、帝人にお願いごとをされる仲についになったのかと感動に打ち震えた。お願いだって?どんとこい!帝人君が俺におねがいしてくれるというのならば、NASAの機密だって暴いちゃうぞ!
そんな無駄にやる気にあふれた臨也に向けて、帝人がしたお願いというのは。
まさに。


「ぎゅってしてください」


核 弾 頭 。
「…………え?」
「さっきみたいに、こう、ぎゅって」
「……………………これは、夢?」
「いやいやいや、なんで夢なんですか意味がわかりませんよ。それとも嫌ですか?」
臨也は首をちぎれんばかりに横に振った。
なにこれ何のフラグ。美味しすぎて夢だったりしたら立ち直れないけど、いいの?
ぎゅって?
さっきみたいに?
み、帝人君を、俺が!?
「え、あ、ぅ、その、なに、あの」
「臨也さん、日本語で」
「だっ、だだだ抱きしめ……っ?」
「そうです、ぎゅーっと。さ、遠慮無くどうぞ」
はい、と手を広げた帝人の、その平然とした顔さえまともに見ていられない。今自分はリンゴより赤い自信があった。というか本気でなんなんだ、この夢の様なお誘いは。
臨也はとりあえず自分をおもいっきりつねり、あまりの痛みに涙目になりながら、もう一度帝人を見た。なにしてるんですか、と笑うその顔はホンモノだ。だとしたらほんとうに、抱きしめていいのか。
手を上げたり下げたりしながら一人でぐるぐると迷っている臨也に、ずっと待っていた帝人はいい加減に呆れた顔で、仕方ないなあとつぶやいた。そうして、ぽすっと自ら臨也の胸に収まる。
「はい、臨也さん。ぎゅーっ」
「ぎ、ぎゅーっ」
子供にするように抱きしめることを促され、臨也はつられて腕に力を込めた。風呂上りのフローラルな香り、プライスレス。っていうかなんだここは桃源郷か。この子は俺の天使、しからばここは天国か。俺は死んだのか。
頭に血がのぼり、思考回路はとっくの昔にぶちきれている。目の前にあった帝人の肩口に顔をうずめて、すん、と小さく臨也が鼻を鳴らしたその時だ。
「あー、うん、やっぱりなあ。そうですよねえ」
何かに納得したような、帝人のつぶやきが。
「な、なに?なにがそうなの?」
反射的に聞き返した臨也に向かって、そろそろと顔を向けて、帝人はとても真面目な顔である。
「あ、さっきもちょっと気になったので確かめてみようかなって思って」
「気になったって、何が?」
「えーと、言ってもいいのかなこれ。ショック受けないでくださいね」
「それは現時点ではなんともいえない」
っていうかショックを受けるようなことなのか?今が天国だとしたら、つまりそれを聞くと地獄に真っ逆さまみたいな?
そんな言葉は聞きたくないが、でも帝人が何を気にしているのかは、とても気になる。聞かせてくれともやっぱり聞きたくないとも言えずに、おろおろと言葉を失った臨也に向けて、帝人の会心の一撃。


「臨也さん、僕のこと好きなんですか?」


「……は、ぇ、あ?」
「僕のこと押し倒したいとか思いますか?」
「っおあぇ」
あまりのダメージに、臨也の声にならない声は情けなく部屋に響き渡る。もしかしてばれているかも知れないということについては、実は危惧していた。危惧していたが、なぜこのタイミングで……。
「その、非常に言い辛いんですが……」
混乱する臨也に向かって、とてもとても申し訳なさそうな天使が、小さく、ささやいて曰く。


「その、男の象徴的なものが、あの、当たってる、んですけど」


「……っぎゃあああああああああああああああああ!?」
本来、この場面で悲鳴をあげるべきは、帝人の方なのではないか、なんて。
そんなことに思いを馳せる、嵐の日である。

作品名:コンビニへ行こう! 後編 作家名:夏野