二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

三軍師で学パロ

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「君は相変わらず生真面目に仕事をするんだね。私もやらなきゃいけない事はやるけどさ」
「私はしなければならない事をするだけだ。卿が言う程、真面目ではない」
 隣の席に座った元就先生は、マグカップを私の方に差し出してくれた。中身は真っ暗な珈琲で、美味しそうである。
「だからと言って生徒一人一人が躓いている所を割り出して、それを重点的に出すようなプリントの束を作るなんて凄いよ」
 私には出来ないよと自信なさげに笑いながら、元就先生は机の上でプリント作りを再開していた。パソコンが致命的に苦手だからか、またも手書きで作成しているようである。達筆だから苦情はこないのだろうが、彼の作成したパソコン打ちのプリントなど定期テストくらいしか見た事がない。
「卿だってプリントを作っているではないか」
「私のは全員共通のものだよ。官兵衛のように個々には対応出来ていないんだ」
「それでも充分だ。なにもしないよりは、な」
 教科書を眺めながら問題を作っている元就先生を妨害するのも悪いと思い、私も自分の仕事に集中する事にした。本来なら全教科、最低でも文系に対応したテキストを作成してやりたかったのだが、結局自分が教えている古典しか作成出来なかったのが悔やまれる。生活指導部が忙しく、作成する時間がなかったのだ。
「なぜこの学校は意欲的に火種を消さぬ」
 カウンセラー医と懇意すぎる生徒会長と、生徒会によって占拠されるカウンセラー室。音楽教師は授業を放棄してバンドの練習をし、書道教師は救いようのない子煩悩。体育教師は女好きと男好きしかいないし、養護教諭は保健室のベッドで眠りこけて、来た生徒への対応はおざなりだと聞く。正直この学校の問題の多さは異常だと思うのだが、誰一人として気にとめていないようである。
 イライラしつつもプリントの最終チェックを終えたので、全てを出力するようパソコンに指示してプリンターの前に移動する。妙に新しいプリンターなので、コンビニにあるコピーよりも素早くプリントが印刷されていく。この調子だと今日の内に配れるだろうか、と安心していた矢先、元就先生が私の肩を叩いた。電話だよ、と言われて渡された携帯の画面には竹中半兵衛の文字。職務怠慢にも程がある養護教諭である。
 出ないで無視してやろうかとも思ったが、それをすれば職員室に特攻しかねない。暫く考えた末に出てやれば、物凄くハイテンションな声が受話器から聞こえてきた。
「やっほー官兵衛せんせ、今日は午後に授業ないんでしょ? 俺の話に付き合ってよ!」
「生憎だが今は忙しい。残念だったな、半兵衛」
「官兵衛せんせは相変わらず真面目だなぁ。でも昼寝し過ぎて眠れないんだよね、話し相手になってよ」
「卿が手伝うのなら付き合ってやる」
「官兵衛せんせ優しい! その位お安いご用だよ」
 了承を得られた所でぶち、と通話を遮断しついでに電源も切ってジャケットへ仕舞う。あとどれ位で印刷が終わるものかと、考えあぐねながら。





 竹中半兵衛は歓喜していた。

 体調不良以外で滅多に保健室に来てくれない官兵衛せんせが(仕事の山を持ちつつも)来てくれるというのだから、これはもう赤飯炊いて盛大に祝うレベルの喜びである。今日帰りにコンビニで買って帰ろう。
 とりあえず寝転がっていた所為でぐしゃぐしゃになっていたシーツを綺麗に正してから、電気ケトルで湯を沸かす。いつ来るかはわからないけれど、これで準備は万端である。
 トントン、と扉を叩く音がしたので開けてやれば、大量の紙類を抱えた先生がいた。なんだこれ、何に使うの? 机に全てを置いてから、先生は腕をさする。よっぽど重かったらしい。
「手伝ってくれるのだろう?」
「官兵衛せんせの頼みなら仕方ないなぁ。……で、この紙束はなんなの?」
「長期休みに出す課題だ」
 全て谷折りにして冊子状にして欲しいと彼は言う。課題を用意するだけでも凄いが、A4の紙の上を留めたものでなく、B5の冊子状にして配布する辺りも生真面目な官兵衛せんせらしい。俺には出来ない芸当である。
「官兵衛せんせってマメだねぇ」
「他でもない、生徒の為だ」
 付箋で仕切られた一束を手に取ると、どうせ鞄の中でよれてしまうだろうに、一枚一枚丁寧に折り始めた。個人的にはそれを眺めていたかったのだが、卿もやれと目で訴えられてしまったので、仕方なしに一束を手に取る。全部一度に折った方が効率がいいと思いながらも、一枚一枚ゆっくりと折り進める。だってその方が長く官兵衛せんせといられるから。





「んー、やっぱり官兵衛がいないとつまらないね」
 隣の席の官兵衛が保健室に行ってしまったので、私は一人虚しく作業をしていた。別に隣の席に官兵衛が座ってようと作業中は一切喋らないのだけど、矢張り寂しい。彼の机の上に放置されていた飲みかけの珈琲を見ていたら、無意識の内に溜息が漏れていた。
「保健室に行って作業しようかな」
作品名:三軍師で学パロ 作家名:榛☻荊