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みっふー♪
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novelistID. 21864
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かぐたん&ぱっつんのやみなべ★よろず帳

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「……ギターはちょっと、コレなもんでね、無理なんですけど、――ブルースハープなら」
――すちゃ! おじさまは取り出したハープを、だらりと不自然に垂れたマントの左肩で軽く拭うようにして言った。
「……めっ、めいよのふしょうですねっ」
一瞬呼吸を忘れて見入っていたおっちゃんが、グラサンの下の鼻水をずびびと啜って声を張った。
「――それでは一曲!」
先生が拍手した。おっちゃんは景気よくギターを掻き鳴らした、「ニンゲンなんてダラッダラ! いぇいっ!!」
(※なお、当シーンにおいて先生の台詞がひと言もなかったのはおじさま方の萌え萌え☆会話を聞き漏らすまいとお酌とツマミ配給とその他雑用にのみ容赦なく集中していた結果であります。)

「……あっちはあっちで盛り上がってますねぇ、」
なだめ疲れてややくたびれた様子にメガネ少年が言った。
「私眠くなってきたアル……」
泣くだけ泣いて気が済んだらしい少女は、大きく欠伸するとだらりとテーブルに伏せた。
「わふっ!」
少女の足元で白いもふもふのワン公が軽くノリノリで尻尾を振った。
「……ねーねーお兄サマーーー、」
でもっておさげ兄貴はいまだ全然懲りていなかった。
「気ィ悪くしたなら謝りますからぁ、立場上はボクが兄貴だっつっても、あくまで事務的なモンじゃないすかー、」
袖を引く兄貴の腕を振り払ってマスターが言った、
「しつけぇな! だから俺はオマエの兄貴でも弟でもないしなる予定もねぇっつってんだろが!」
マスターの氷のガンクレもまるで役に立たない、
「そんな冷たいこと言わないで下さいよー、ほらこのこんいん届けにちゃちゃっと判押すだけでね、ほぉらボクらはたちまちアブナい義兄弟ーー♪っと、妹子ーーーーっっっ!!!」
先生の様子を窺いにじりじりカウンターににじり寄っていたマスターの傍を離れ、兄貴が突如テーブル席に飛んで行った。
「ほらおまえハンコ押せハンコ、ここにな……、こやってペッタン、と……」
「うーん……」
ごーいんに腕を捩じり上げた兄貴にハンマーロック掛けられつつ朱肉ぺたぺたやられても、妹は目を覚ます気配がない。根性据えて断固眠気が勝っている。
「アンタ! 寝ぼけた自分の妹に何やらせてんすか!」
メガネ少年の剣幕にちらと目を上げた兄貴が言った、
「えーナニーーー? ひょっとしてキミも俺のギリの弟になりたいわけぇー?」
「……は?」
メガネ少年が冷や汗垂らして固まった。おーよーに笑って兄貴は言った。
「はっはっは、モテモテで参ったなこりゃMMK……、だったら妹子にじゅうこんさせないとっ!」
兄貴はマジ顔でぺらりと婚姻届の書類を捲った。
「ほら妹子、こっちにもな、ハンコぺたって……」
「ちょっとォォーーー!!! この人モラルのかけらもないんですけど!」
メガネ少年の絶叫に畳みかけるようにして、♪にんげんっなんてダラッダラダラダ〜ラ〜、グラサンおっちゃんのムダにイイ声の間奏に、すっかり興の乗ったブルースハープの哀愁が重ねて冴え渡る。
「……」
おじさまたち(?)の夢のセッションにうっとり聞き惚れる先生、青ざめるマスター、テーブルの上でせっせと婚姻届を書き連ねるおさげ兄貴、ヨダレ垂らして寝こける妹、フガフガ肉球を舐める犬、ブツブツ言いつつも少女に掛ける毛布代わりにおじさま(?)が脱ぎ捨てた世紀末マントを甲斐甲斐しく借りに行くメガネおかん少年、最終的に目指すところがわからない、世紀末いざかやうたごえカフェの夜は今日も更けていく……。


+++

後日、どこでどううっかりミスをやらかしたのか、
『ボクたちけっこんしました☆』
タキシード着込んだもふもふワン公と、はっちゃけドレス姿の兄貴のこじゃれたウェディングフォトカードが店に届いた。
「……」
マスターは黙ってこめかみを押さえた。ワン公には同情するべきだろうが。
「ちぃっ、先越されたね……!」
カウンターの床にカードを叩き付け、チャイナ少女は全力で地団太踏んだ。――この妹にしてあの兄あり、マスターは心に合掌した。
「可愛い……」
と、足元のそれを拾い上げた先生がぼそりと漏らしたのを、マスターが無論聞き逃すはずがなかった。
――先生! “カワイイ”ってどーゆー意味ですか?! 洋服着せられたデカい犬がですかっ?! まさかと思うけどたっぷりレースとドレープ使いのトンチキおさげ兄貴がですか?! ……そっ、それとももしかして先生、そっ、それを自分も北……、
「……」
それ以上は脳が容量超えて画像が自動シャットオフされてしまう、そこらへんモード関連は存外に低スペックなマスターであった。


+++++