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みっふー♪
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novelistID. 21864
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かぐたん&ぱっつんのやみなべ★よろず帳

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目を移すと、ロンゲがてててと押さえている後ろ頭に着ぐるみがぺたぺたばんそーこーを貼ってやっている最中だった。……えーなにこーるどスプレーとかじゃないわけぇー、剥がすときかみのけくっついて痛いだけなのに、どーゆー寸法なのかしらねっ。
「それじゃ、木圭くんも無事送り届けたし、私は帰ります」
いちお私も挨拶しなきゃと思って立ったんだったけど、両手で目隠ししたままの私の方を見て、先に会釈をくれた先生が言った。
「え」
銀ちゃんの天パがちょっと動いた。
「もうですかっ?!」
わかりやすく頭にバッテンのばんそこを貼り付けたロンゲが残念そうに声を上げた。
「まぁ、次元を往復するにはいろいろと制約がありますからね、」
控えめな笑顔に先生が言った。着物の袖を掴む勢いでロンゲが引き止めようとする、
「いいじゃないすかお茶くらいしてけば、……狭くて汚いトコですけど、センセが座る場所くらいありますよっ、」
勝手に冷蔵庫開けたりお客さん用のクッション出してきてみたり、マッパのロンゲが辺りをバタバタ走り回る。
「……。」
腕組みしたまま仏頂面の銀ちゃんは何か言いたそうにしていたが、結局ひと言もしゃべらなかった。ロンゲの無法行為に呆れていただけじゃなくて、他に何か、もっと言いたいことがあるのに我慢している風だった、……なんて、わかんないけど、なんとなくそう思っただけだけど、でもちょっとだけわかるような気もする。
――昔、私がまだずっと小っちゃかった頃、たまにパピィが家に帰ってきて、またすぐ出かけていこうとしてるとき、私は本当は怒ってるんじゃないけど、行っちゃダメってワガママ言いたいけど、そんで寂しい思いさせてゴメンなって、頭ナデナデされて気ィ遣われるのはもっとシャクだから、――パピィのことなんて知らないね、宇宙の果てでもドコでも好きなトコ行っちゃえばいいアル、お見送りなんかしないもん、窓の陰からパピィの背中が見えなくなるまで、ぜったいぜったい泣くもんかって、無理やり何かに腹を立てているフリのときの気持ち。
(……。)
あー、思い出したら鼻の奥がきゅんきゅんすっぱくなってきたアル。つかだいぶすこんぶスティックのハッピーすこんぶパウダーのせいかしんないアルけどっ。
「木圭くん、本当にお茶とかいいですから、」
――だいたいここは君の家じゃないでしょう、苦笑いで先生が言った。
「でも先生――、」
振り向きかけたロンゲの後頭部に、――ガスコン! まだむの店からぶんちん代わりに借りパクしていたぶあつい灰皿がヒットした。
「先生、今のうちに行って下さい、」
先生の方を見ずに銀ちゃんが言った。
「――……、」
先生は何か言いかけようとして、だけど途中で唇を閉じた。代わりにほんの少しだけ口の端を上げて小さく笑った。たぶん銀ちゃんには見えていない角度だったけど。
「――それじゃ、」
先生が空中に手をかけた。何もないはずのところに、みょんっとぽけっとみたいな裂け目ができた。
「……、」
顔を覆ったまま私はまばたきをした。先生はもうそこにいなかった。
「――てててて……、先生!」
二段重ねのコブを押さえて起き上がったロンゲが机を振り向いた。
「いま帰ったぞ、」
どっかとチェアにふんぞり返り、机に足を投げ出した姿勢で銀ちゃんが言った。
「えーっ! バカおまえなんで引き止めないんだよっ」
灰皿片手にロンゲがきーきー喚いた、
「うるせぇな!」
銀ちゃんの声が尖った。耳にヒリヒリ痛いくらいに。
「……いつまでも先生先生って、ガキかお前は、」
吐き捨てるように銀ちゃんが言った。机に上げた足を雑に下ろして、くるりとチェアの背を向ける。
「……。」
立ち上がったロンゲが、ゆっくり机に向かった。
「……悪かったよ、」
ロンゲは呟くと、人ん家の冷蔵庫からちゃっかり抜き取っていたドぎつい緑色のまっちゃちぇりおのびんをコトリと置いた。
「……」
チェアを回転させながら机の上のびんをゲット、フタを開けて一気に喉に流し込み、一周して正面に戻った銀ちゃんが景気よく全量噴き出してひと言、「マズい!」
「えー俺は好きだけどなーこの味、」
――だったら俺にくれればよかったのにーぃ、ロンゲが肩を竦めた。
「ただいまーーーーっっっ!!!」
そこへぱっつんとサダちゃんとグラサンおじいちゃんが散歩から帰ってきた。
「……って、木圭さん何から生まれたんすか、」
――やぁおかえりー、モロかぶりしたドみどりの液体をダラダラ滴らせながらサワヤカに振り向いたロンゲを見て、ギョッとしたようにぱっつんが言った。
「うううううう、」
サダちゃんはさっそく宿敵の着ぐるみと睨み合いを始めた。おじいちゃんはいちばん後ろで腰を曲げて、うろうろモゴモゴしていた。


〜アナザーグラウンド〜 おわり