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Moonlight

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ドアを開けるとそこにはガキがいた。






Moonlight






曇りひとつ無い、
鳥の囀りが心地良い土曜の昼下がり。

ピンポーンとありきたりな音が響き、
家の主人がドアを開けるとそこには見覚えがありまくりなのに初対面の子供がいた。


「おい。なんの冗談だ。」

「あぁ君なら分かってくれると思ったよ。」

「いや、分からねぇから聞いてんだよ。」

「私はロイ・マスタングだ。」

「・・・・・・・・・・。」


パタン―


ロイの目の前で先ほどまで開いていたドアは完全に閉められた。
出迎えてくれた人の姿もしっかり消えた。

ガチャ―


どうやら鍵をかけられたようだ。



パチン
(指パッチンbyロイ)


パン!!
(陣無し練成byエド)


バーン!!!!!
(ドア開けたbyエド)



「てめぇは人の家を燃やす気かっ!!!!!」

「君の家の鍵を開けるのは難しい気がしたものだからね。」



不敵な笑みをしながら小さい発火布をポケットにしまったのはロイ・マスタング。
東方司令部に勤務している軍人30歳―
のはずなのだが、今目の前に居る彼の姿は誰がどう見たって子供だ。


そしてその子供に本気でキレているのはエドワード・エルリック。
昼は学生という普通の青年だが、夜は華麗に夜空に現れる怪盗FA。
これでも正体を隠しているのだが、
どうやらこの軍人には正体どころか住む家も学校もバレているようだ。




「とりあえず仕方ねぇから入ってよし。」

「遠慮なくお邪魔するよ。」




リビングに通しソファに座るように促し、
エドはキッチンへ向かった。
嫌がらせにイチゴミルクを出してやった。


「そういうところも可愛いな。」

「その姿で気持ち悪いこと言うな。」

「なかなか美味しいよ。」

「チッ」

イチゴミルク攻撃は失敗に終わった。




「で?なんなんだよその姿は。」

「その前になぜ私だとすぐに分かったんだい?」


気になったことを聞いてみたつもりのロイだったが、
エドワードは当然のようにどこをどうみてもアンタだろうがと答えた。

ロイとしてはかなりの変身を遂げているので複雑だったが、
とりあえず気づいてくれたことに感謝した。


「私がこんな姿になった理由を話すと長くなるんだが…」

「簡潔に述べろ。」

「・・・・毒を盛られて縮んだ。」

「・・・・・ぷっ」



エドの肩が震えている。
ロイは深いため息をはいた。

このやり取りはもうしあきているのだ。
自分の部下、こちらに来ていた親友(こいつは顔スリスリまでしてきた)


「けっこう深刻な事態なんだよ。」

「わりぃ・・・ぷっ」


「はぁ・・・・・・」





―10分後―



「で?俺にどうしろって?」

やっと笑いが落ち着いたエドは本題に入った。
わざわざ自分の家を訪れたわけはなんなのか。


「しばらく君の家に泊めてほしいんだ。」

「はっ???????」


エドは言葉の意味を理解できずに放心状態になった。


「だから、元に戻るまで泊めて欲しいんだよ。」

「断る。」

「理由くらい聞きたまえよ。」


どうせくだらない理由だろうと思っていたエドは聞く気は無かったが、
ロイは勝手に話しだした。

なんでも、今回ロイに毒を盛ったのは強大なテロリスト組織。
そして盛られたのは組織の開発した毒薬で死ぬはずだったらしいのだが、
なぜかロイは死ぬことなく体が縮んだのだという。

そしてロイ・マスタング大佐は現在行方不明ということになっているらしい。
何故ロイの暗殺をたくらんだのか、テロリストの目的が明確にならない以上、自分は下手に動くことが出来ない。
自分の家にとどまるのは危険、部下の家に突然子供が住み始めるのも不自然。
かといってここを離れるわけにはいかない。

君しか居ないのだ。



なんて理由だったので、
断るにも断れず…


「あーーーーもう仕方ねぇな!!!
 俺の邪魔だけはすんなよ!!!」


エドにもエドのプライベートがある。
ましてやエドの裏の顔は怪盗だ。


証拠をとられるわけにはいかない。
自分には果たすべきことがあるのだから。


いくつかの約束ごとをかわしロイを泊めることを承諾した。




「よろしく頼むよエドワード。」

「ったく、死ななくて良かったなチビ。」

「君ね、これから同棲するというのに…さきが思いやられるなまったく。」

「ぅおい。誰と誰が同棲だ!!!」

「私と君に決まっているじゃないか。」

「今すぐ出ていけ。」






その後ロイは3時間、
ベランダに立たされた。








こうして、
表向きは青年と子供・・・
しかしその正体は怪盗と軍人という奇妙な二人の生活が始まった。





end

作品名:Moonlight 作家名:おこた