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FOR MY STAR!

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 暇だからと図書館で借りてきた本に目を落としていたのだが、気が付けば目の前に仁王立ちする男がいた。何か嬉しい事でもあったのだろう。瞳をきらきら輝かせて、同じようにきらきら輝く星のかけらを両手一杯に握り締め俺に差し出す。面倒だから無表情で一瞥くれてやったのだが、それでもなおきらきら笑って手の中のきらきらを俺の頬にぐりぐり押し付けてきた。さすがにこれは腹が立つ。

「お前何がしたいんだよ!」
「食う?」
「いらない」
「やらない」

 ウスラトンカチ、悪意をたっぷり込めてそう呟いてから再度本に視線を戻した。
 最近のナルトのブームは金平糖だ。様子を見ている限りではピンクの金平糖が一番のお気に入りらしい。更に言えば食べるでもなく、ただそれを両手でころころ転がして観察するのがバカの主な楽しみ方らしい。何回も食わないのかと尋ねてみたのだが、どうやらカカシの野郎が「これは星の子供だから食べてはいけない」と訳の分からない話をナルトに教え込んだらしい。性根の腐ったカカシもカカシだがそれを信じるナルトもナルトだ。

「サスケ!サスケ!」
「今度はなんだ」
「溶けた!」

 そりゃこの暑さの中、毎日毎日握って遊んでれば溶けるに決まってるだろうよ。ただでさえお前は体温が高いんだから。
 やれやれと盛大な溜め息をついていたらベランダから騒がしい足音を立ててナルトが走ってきた。俺の正面に立ち塞がるとぐずぐずに溶けた金平糖を差し出して泣きそうに顔を歪める。いやいや、俺にこれをどうしろと言うんだお前は。その顔を冷静に観察しながら俺は言葉を探した。

「ナルト。今そこのベランダから見える星があるだろ?でも実際はもうとっくに爆発しちまってる可能性だってある。星の寿命なんてそんなもんなんだよ。だから仕方ねえって」
「なんで」
「…星は生命力が弱いんだよ」
「だからなんで」
「…それはまあ…色々複雑な理由があるんだよ」
「ふーん」

 納得したのかどうなのか、ナルトは微妙な顔でふんふん頷くとなぜかぐるりと室内を見渡し始める。そして金平糖がぱらぱら床に落ちるのと同時に俺の手元から本を引ったくるとにやにやと含み笑いを浮かべた。同時に俺は嫌な予感に襲われる。

「サスケ」
「なんだよ」
「お前って賢いんだな」

 砂糖まみれの指先が本の表紙をゆっくりなぞる。
 「誰でも分かる!ザ・天体」。


おわり
作品名:FOR MY STAR! 作家名:どいさん