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くぐもった情痴

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※情緒不安定な波江さんです。
※設定は色々と省略しました。
※雰囲気でお願いします^^



「……いざや」

暗闇で一人きり、不安で仕方なかった私に一つの光が見えた。
真っ暗な部屋の中、月明かりに照らされた彼に目を奪われる。



「波江さん…?」

薄暗い事務所の、とある一室。家主が普段仮眠を取るためだけに作られたそこの部屋は、当然のようにベッドしか置いていなかった。ガラス張りの天井は複層なのか、全く外気を感じない。円く切り取られた天窓から見える夜空はどこまでも見えない暗さで、星だけが点々と光っている。
そこから差し込む淡い光。月夜に照らされたベッド、真っ白なシーツが青白く光るのとは対照に男の髪は黒光りに反射している。

「どうしたの?」

そういって男は私に笑いかける。笑った目の下の隈に疲労が窺える。
手を伸ばして指先でそこをそっと触れると擽ったそうに目元を細めた。

静かにベッドに乗り上げると男は彼女が横になるためのスペースを空けて、自分に手招きした。大人二人で寝て、あと一人くらいなら寝られそうな大きさのベッドの真ん中に私と男はお互いをに向き合う形で寝た。暫らく二人で見つめあっているとまた男は私に問いかける。

「っ…」

どうしたの、と。少し伸びてきた私の前髪を耳に掛けて、頬を撫でながら訊ねた。
男の繊細な指で輪郭をなぞられると体が小刻みに震え、血液をそのまま吸収したかのように真っ赤な瞳に見つめられると胸がぎゅっと締めつけられて苦しい。息が苦しい。
上手く言葉が出せない。

そんな私の様子を見て男は言った。

「怖がらないで」

見つめる瞳に真剣さが増して、余計に胸が苦しくなった。脈打つ心臓の鼓動が次第に速く鳴っていく。その視線から逃げようとすれば、それを許さないと男の両手が自分の頬を優しく、力強く包んだ。と同時に締めつけられた心が、少し、軋んだ音が、した。
どうして。
こんなに胸が、心臓が、息が苦しく締めつけられるの。

「…そんなに怯えられると、流石に傷つくな」

眉根を寄せて無理に笑みを貼り付けた男の顔を見て、胸が張り裂けそうになった。ごめんなさい、そう、無性に謝りたくなった。ごめんなさい、そんな顔をさせて。ごめんなさい、貴方を傷つけてしまって。ごめんなさい。声には出せない、言葉にはできない。そうして、ごめんなさいと心の中で繰り返していれば彼は私の頬を包んでいた右手を離して、私の髪に触れた。
優しく、優しく。

サラサラと彼の指で梳かれていく自分の髪。その触り方がなんだかくすぐったくて、でも、気持ちいい。
彼の指先が耳を掠めたと思えば、吐息が耳朶に掛かって彼の唇が寄せられて、囁かれる。

「だからさ、」

今だけは何も考えないで、俺のことだけを考えて──…。

囁かれて、その熱を孕んだ瞳に捕らわれて。
気づけば私は瞼を閉じて彼と唇を重ねていた。






くぐもった情痴
作品名:くぐもった情痴 作家名:煉@切れ痔